ゲーテさんとカントさん

 

ゲーテさんがカントさんの著作を読んでいたということは、
伝記やエッカーマンさんが書いた『ゲーテとの対話』
で知っていましたけど、
いま読んでいる『ウィルヘルム・マイステルの遍歴時代』に出てくるとは、
思いませんでした。
下に引用する箇所など、
さすがに小説のながれと有機的につながっているとは、
ちょっといえないように感じますが、
ゲーテさんの性格、人物像を推し量るには、
おもしろいと思います。

 

カントは、理性の批判というものがあって、
人間が所有するこの最高の能力は、
自分みずからも監視する理由を持っているということを、
われわれに注意させた。
この声がどんなに大きな利益をわれわれにもたらしたかは、
めいめいが自分自身において吟味したことだろう。
しかし、
私はまさにこの意味で一つの課題を提出したいと思う。
およそ芸術が、
特にドイツのそれが、どうにかして再び立ち直り、
喜ばしい生の歩みで前進すべきであるならば、官能の批判が必要であると。
(ゲーテ[作]関泰佑[訳]
『ウィルヘルム・マイステルの遍歴時代(中)』
岩波文庫、1964年、p.233)

 

理性批判、でなく、官能批判、か。
ゲーテさんは1749年の生まれ。カントさんの生年は1724年。
カントさんのほうが先輩。

 

・鰯雲巨き天狗の扇模様  野衾