多くを読まず、日めくりのように、一日一ページを謳い文句とする本がありまして、
ここで何度か引用しているヘンリ・J・M・ナウエンの
『改訂版 今日のパン、明日の糧』は、
そういうたぐいの本。
たとえば、きょうは、2023年2月28日。
あ。
きょうで二月も終り。
早い!
早すぎる!
♪きょうでお別れね もう逢えない
なんて歌がありました。
いや、あります。
齢をかさねた菅原洋一さんの歌には、
男と女の別れだけではない、いろいろな別れが含まれているようで、
いっそうの味わいがあります。
それはともかく。
去年もおととしも、その前の年も、
同じ短文
(一日一ページですから、何分もかかりません)
を読んでいると、
ああ、
こういう内容だったな、
と、
初めて読む文章ではありませんから、
すぐに思い出すことができます。
そのこととは別に、
去年、おととし、その前は、ふつうに、何ということもなく読んだはずなのに、
去年でなく、おととしでなく、
また、
きのうでなく、おとといでもない、
きょう読むと、
五行目から六行目にかけての一文が妙に気にかかったり、
ぐっと胸にこたえたり、
深くこころにささったり。
はたまた。
傍線や波線が引かれていて、
ん!?
どうしてここに線が引いてあるんだろう?
まるで古書を開いたときのような驚きがあったりもし、
見えないはずのこころが、
文を読むことで、
文が鏡となって映し出されているような具合であります。
ちなみにナウエンの本で、きょう、
目に留まるのは、
一行目
「空っぽであることを私たちは恐れます。」
去年、おととし、その前は
どう読んだだろう?
とんと忘れてしまいました。
・ばあさまやいつまで生きる?蜆汁 野衾