読書のたのしみを堪能してきた『カザノヴァ回想録』ですが、
いよいよ最終第六巻一〇〇ページを残すのみ、
ちょっと名残惜しくなり、
読むスピードをさらに落とす具合。
いまは河出文庫にもなっているようですが、
わたしが読んでいるのは、ホッチキス止めでなく紫色の貼り箱入り。
各巻に月報が付いていまして、
それが文庫版でどうなっているか、
ひょっとしたら、
その文章が付されていないのではないか
とも思われ、
そんなことから、
古書で求めたものです。
月報は「カザノヴァ・サロン」と題され、
当時の著名な方々が『カザノヴァ回想録』と“稀代のモテ男”カサノヴァ
について
コメントを寄せています。
名前を挙げると、
澁澤龍彦(月報の表記は、渋沢竜彦)、夏川文章、栗田勇、平川祐弘、なだいなだ、
川村二郎、丹羽文雄、平岡昇、小笠原豊樹、開高健、大岡昇平、米川良夫
の十二名。
短文ながら、
どの文章も読ませます。
『カザノヴァ回想録』は窪田般彌の前にも翻訳が出ており、
また、
原文で読んでいた方もいるでしょうから、
当時において、
すでに読書人たちにとって恰好の読み物になっていたことが分かります。
本そのものの面白さもさることながら、
その本がどう読まれてきたかを読むことは、
本の厚みをさらに増してくれます。
・さらさらと細谷川の蕨かな 野衾