新井奥邃(あらい おうすい)の文章を読んでいると、
ときどき、
立ち止まるようにして目をとめることばに出くわすことがありますが、
「師病」はその一つ。
わたしたちは、
いまだ十分に学んでいないにも拘らず、やたらに人を教えたがる、
そういう人間の傾向を、奥邃は「師病」と呼びました。
ところで、
これによく似たもの言いが、『孟子』「離婁章句 上」にでてきてハッとしました。
孟子曰、人之患、在好爲人師、
孟子曰く、人の患い《うれい》は、好んで人の師となるにあり。
孟子がいわれた。「世間の人の悪い癖は、
〔それほどでもないのに〕とかく他人《ひと》の先生のなりたがることだ。」
岩波文庫『孟子』のなかで訳注者の小林勝人(こばやし かつんど)さんは、
そのように訳しており、
内容的に、奥邃のことばと重なります。
新井奥邃が『論語』『孟子』をはじめ、中国の古典に親しんでいたことは、
『新井奥邃著作集』を作りながら知ったことでしたが、
たとえば『孟子』を読んでいて、こういう箇所に出くわすと、
なるほど、
ここのところを踏まえてのことばであったかと、
さらに合点がいきます。
・クラシックジャズもまた良し秋うらら 野衾