虎猫

 

桜木町駅から紅葉坂の会社へ向かう途中、
本町小学校近くの裏通りに、いつもだいたい寝そべっている虎猫がいます。
首輪がときどき替えられていて、
赤いスカーフ様のものが巻かれていたときなど、
口をへの字に曲げたムスッとした表情との対比に、
思わず笑ってしまったこともあります。
さて、きのうのことです。
虎猫がいつものように、
工事現場の横で寝そべっています。
お、きょうも居るな、と思いながら通り過ぎると、
反対側から一人の女性が歩いてきて、
わたしとすれ違いました。
すれ違いざま、
眼がきらりと光り、ほんの少しだけ微笑んだように見えました。
ん!?
わたしは立ち止まり、
ふり返って彼女の後姿を目で追いました。
と。
十メートルともう少し、歩いていったかと思いきや、
なにやら虎猫に声をかけたようでしたが、虎猫には近寄らず、そのまま、建物のなかへ。
すると、
虎猫がスッと立ち上がり、
女性を追うように建物のなかへと入っていきました。
いつものモサッとした印象とは別物で。
そうか。
そういうことだったのか。

 

・この年の不要不急の冬支度  野衾