郁乎さん

 

 頑張れと告げて旅立つ幾夜かな

加藤郁乎さんが今月十六日、自宅で亡くなられました。
八十三歳でした。
生前、お目にかかることはありませんでしたが、
写真集『九十九里浜』の出版(二〇〇四年)に先立ち、
推薦文をお願いしたところ、
すぐにお原稿をくださいました。
お礼の電話をかけた際、
いろいろとお話をしてくださり、
そのときのお声が今も耳に残っています。
四十年前、伊藤左千夫の句に導かれるように九十九里を歩いたこと、
安原顯さんから長詩を頼まれていたのに、
それが叶わぬうちに安原さんが亡くなられたこと、
また、
わたしが秋田の生まれであることを告げると、
土方巽を引き合いに出し、
頑張りなさいと励ましてくださいました。
涙が出るほどうれしかった。
その後も、
春風目録新聞にご寄稿いただいたり、
ずうずうしくも、
拙著『出版は風まかせ』に推薦文を頂戴したりしました。
ありがとうございました。
ご冥福をお祈りします。

 思い出はタルコフスキーの眠りかな  野衾