ウミガメ!?

 

 新緑に溶けて中まで光りをり

専務イシバシが電話口で戸惑いながら、
「あのう、読み方が分からないのですが、
ウミガメさんというのでしょうか、
そうです、はい、そのウミガメさんいらっしゃいますか?」
と話すのが聴こえました。
彼女の机は、
わたしのすぐ右手にありますから、
よほど仕事に集中しているときでもないと、
何を話しているのか聴こえます。
ウミガメさんかあ。
世の中には変わった名前があるものだなあ。
ウミガメさんがいるってことは、
サワガニさんもいるのかな。
ヤマザルさんとか。
それから、
カワエビさん。
昨日、
連休明けの九州出張報告があり、
木のテーブルを囲み、
みな神妙な面持ちでイシバシの報告に耳を傾けましたが、
事前に渡されたプリントに目を落としていたら、
海金という文字に目が留まりました。
海金、ウミガネ。
そうか。
ウミガメじゃなく、ウミガネか。
だよね。
ウミガメはないよな、
人間なんだから。
サワガニ、ヤマザル、カワエビの夢も潰えました。

 汚れてもいのちみなぎる五月かな  野衾