焼きアゴ

 

 だらしなき日もあり夜の初鰹

わたしの住むマンションの管理会社に、
以前勤めていたOさんから突然電話があった。
Oですと名乗られても、すぐにピンとこなくて、
え? あの、どちらの、Oさん?
などと間の抜けた返答をしているうちに思い出した。
電話は築地からだった。
曰く、
築地で飯を食いたくなって出かけたら、
焼きアゴが売られているのが眼に入った。
焼きアゴといえば三浦さんだということで、
買いました。
多く買ったので、半分お分けします。
これから会社にお届けしたい…。
一度Oさんに手作りのラーメンをご馳走したことがあった。
わたしがマンションの理事長をしていたとき、
山の上のマンションのこととて、
玄関ドアが突風にやられて壊れやすく、
Oさんとよく話し合ったものだ。
面白いようにひしゃげたドアを交換しなければならなくなり、
そのことにつき居住者に知らせたところ、
総会に一度も出てきたことがない人間に限って、
なんだかんだと文句を言い、
Oさんに向かって、
酷い言葉を浴びせた馬鹿もいた。
わたしはもらい泣きならぬ、もらい怒りに狂った。
負担金を出すのが嫌なだけだった。
そんなこともあったので、
Oさんとは偶にしか会わないが、
同志という感じが今もある。
Oさんは、週に三度、
一回五時間の人工透析に通っているが、
昨日は木曜日で、透析に行かなくてもよい日だったらしい。
いただいた焼きアゴ、味わっていただきます。
ありがとうございました。

 初鰹きちがひ水を流しけり

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約束

 

 千成へ今宵師を連れ生ビール

今週は外で人と会うことが多く、
約束を忘れていないか心配だが、
今のところは滞りなく進行している。
もう十年も前のことで時効だろうけれど、
現イエローハットの創業者・鍵山秀三郎氏にお目にかかることを、
わたしはすっかり忘れていた。
朝、のんきに出社したら、
「社長、今日、どなたかと会う約束があったんじゃないですか」
専務イシバシからそう言われ、
卓上カレンダーを見、
顔から血の気が引いていった。
どうしようどうしようどうしよう。
どうしようもないのであった。
嘘をつくわけにもいかず、
紹介してくださる方(約束の場所ですでに待っておられた)
のケータイに電話をし、平謝りに謝って、
鍵山先生にもよろしく伝えて欲しいと願うばかりだった。
先生とはご縁が無かった。

写真は、なるちゃん提供。

 梅雨晴間惜しみ烏の鳴いてをり

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佐々木さんの言葉

 

 溌剌と初夏の学生歩きをり

編集長ナイ2くんと明治大学和泉キャンパスへ。
電話で申し込んでおいた佐々木幹郎さんの「詩人と旅」の講演会だ。
3.11後の言葉の変容について語る佐々木さんの言葉は、
絶妙の間合いで語られ、
スッと現れては、
胸に沁み、
またスッと現れては、
胸に沁みていく。
気持ちいい。
言葉って、いいなあ。
一時間半があっという間でした。
受講者の質問に答え、
佐々木さんは、
3.11後につくった詩を披露してくださいました。
紙を持ち、立ち上がろうとされ、
立ち上がるとき、
少し体が横にうごきました。
見ていて、ああ、という感じでした。
「明日」という詩でした。
耳を澄ませて聴いているうちに、
目頭が熱くなってくるのが分かります。
人間は、
それでも生きていかなければいけないのかと思ったら、
人間は、
こうやって生きているのですよと、
上のほうへ向かって叫びたいような、悲しいような、
熱い疼きがこみ上げてきました。
講演が終り、
佐々木さんにあいさつをし、
部屋を出て階段に差し掛かったとき、
涙がわっと溢れてきて、
ナイ2くんに気づかれぬように慌てて階段を下りました。
言葉って、すごいなあ。

 紫陽花や柔らかき闇輝けり

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横芝へ

 

 青天白日飯岡助五郎

写真集『クジラ解体』の打ち合わせのため千葉県横芝へ。
横浜から横芝まで片道約二時間半。
天気もよく、ちょっとした旅行気分を味わいました。
打ち合わせ後、写真家の小関与四郎さんが車を出してくださり、
土地の定食屋さんでセグロのフライ定食をテラチーと二人、
すっかりごちそうになりました。
小ぶりのイワシがからっと揚げられ、
パクパク何匹でも食べられます。美味至極!
さらに、
今回の震災の被害に遭った場所、
侠客として名の知られた飯岡助五郎の墓、
「野菊の墓」で有名な歌人・小説家の伊藤左千夫の生家、
「里の秋」など童謡の作詞で有名な斎藤信夫の生家を案内していただき、
おかげさまで、土地の空気をまたひとつ勉強することができました。
帰りは、最寄りの成東駅まで。
ありがとうございました。

 牛飼の歌を称へる石の文字

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ビル内侵入!?

 

 夏風邪や逆上がりして一巡り

先週末、私用で愛知県春日井市に行き、
昨夜帰ってきたのですが、
今週は外出に加え人と会う約束が多く、
忘れていることがないかなんだか不安になり、
新横浜から家に帰らず、
桜木町駅まで直行、
紅葉坂上の夜のビル内に侵入(!?)しました。
悪いことをしているわけではないのですが、
なんとなく不気味です。
緊張します。
エレベーターが三階で停まる。
わき目もふらずに無音の廊下を歩き、
カードで社屋のドアを開ける。
灯りを点け、
まっすぐ自分の机まで赴き、
卓上カレンダーを確認。
よしOK!
回れ右して来たときと逆に一つ一つ辿って外へ。
その間、おそらく三分とかかっていない。
秒単位で行動する強盗な気分。
こんな映画、なんかあったなあ。

 梅雨なれば知多半島の海重し

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長靴ですか

 

 荒梅雨の色に出にけりシーベルト

雨の日に、何が嫌かと言って、
靴下が濡れることほど嫌なことはありません。
なので、
雨の日はゴム製の長靴を履いて出かけます。
これだと、
横なぐりの雨だろうが、
水溜まりに突っ込もうが、平気です。
素晴らしい!
会社に着き、室内履きに履き替えると、
靴下がピンピン、ハレハレしています。
実に爽快!
洗剤のコマーシャルさえ思い出します。
問題は帰り。
どういうわけか、
長靴を履いて出かけた日に限り、
午後から夕刻にかけ晴れることが多く、
傘も差さずにゴム長靴というのは、
いかにも格好悪い、ようです。
わたし自身はそれほどとも思っていないのですが、
周りから見ると相当異質な感じがあるらしく。
よく行く店のママさんに露骨に笑われたことがありました。
つい先だっても、
横浜駅で横須賀線の電車に乗り換えたところ、
偶然、同郷の知人といっしょになり、
とても珍しいことで嬉しくなり、
さっそく声をかけたのですが、
彼、わたしの姿を見、
「長靴ですか…」と一言。
釣り道具を持たずに電車に乗っている男性はやはり、
かなり目立つ存在であるようです。
ところで、下の写真。
自宅の部屋から写したものですが、
こめかみの辺りから、たら~り汗を流す黒人に見えて仕方ありません。

 そろりそろり苔の階段走り梅雨

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頑張れ!ふるさと石巻 6

 

4月21日、湊第一小学校の体育館では湊第二小学校と合同の始業式が、音楽室では入学式と入園式がおこなわれた。
始業式の校歌はふたつ。子供たちはマスクをしたまま「太平洋は呼んでいる~」と、静かに歌った。
新入生は22名。一人の若いお父さんが亡くなった妻の遺影を両手にしっかり持っていた。若い母親は、大地震直後、魚市場近くの水産加工場から車で、一粒種の娘を迎えに幼稚園に駆けつけた。途中の渋滞を大津波が襲った。卒園式の前日だった。車のナンバーから一週間前に発見された。死化粧の母を見た少女は、「お化粧はママのほうがうまいよ」と言った。(橋本)

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