焼きアゴ

 

 だらしなき日もあり夜の初鰹

わたしの住むマンションの管理会社に、
以前勤めていたOさんから突然電話があった。
Oですと名乗られても、すぐにピンとこなくて、
え? あの、どちらの、Oさん?
などと間の抜けた返答をしているうちに思い出した。
電話は築地からだった。
曰く、
築地で飯を食いたくなって出かけたら、
焼きアゴが売られているのが眼に入った。
焼きアゴといえば三浦さんだということで、
買いました。
多く買ったので、半分お分けします。
これから会社にお届けしたい…。
一度Oさんに手作りのラーメンをご馳走したことがあった。
わたしがマンションの理事長をしていたとき、
山の上のマンションのこととて、
玄関ドアが突風にやられて壊れやすく、
Oさんとよく話し合ったものだ。
面白いようにひしゃげたドアを交換しなければならなくなり、
そのことにつき居住者に知らせたところ、
総会に一度も出てきたことがない人間に限って、
なんだかんだと文句を言い、
Oさんに向かって、
酷い言葉を浴びせた馬鹿もいた。
わたしはもらい泣きならぬ、もらい怒りに狂った。
負担金を出すのが嫌なだけだった。
そんなこともあったので、
Oさんとは偶にしか会わないが、
同志という感じが今もある。
Oさんは、週に三度、
一回五時間の人工透析に通っているが、
昨日は木曜日で、透析に行かなくてもよい日だったらしい。
いただいた焼きアゴ、味わっていただきます。
ありがとうございました。

 初鰹きちがひ水を流しけり

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