加速するバルザック

 

 水吸って部屋の紫陽花色づけり

朝読の『南総里見八犬伝』が終り、
本年後半は、
三十年ぶりに『源氏物語』に挑戦しようと思っているのですが、
和モノ大モノが二つ続くことになるので、
ちょっと洋モノを読みたくなり、
『バルザック全集』の中から、
まだ読んでいない第五巻をひもときました。
この巻には「ウジェニー・グランデ」が入っています。
元町長のグランデは、大金持ちでけちん坊。
その娘がウジェニーです。
グランデの弟の息子のシャルルがパリから遊びに来ますが、
実は、グランデの弟は、
取引先の倒産から破産に追い込まれ、
シャルルを兄のもとへ送った後で自殺することを手紙にしたため、
それを兄のグランデに渡してくれるように息子に託します。
もちろんシャルルは父の破産を知りません。
自殺のことはなおさら。
自殺は実行されます。
シャルルは、父の自殺をグランデ伯父から知らされます。
失意のシャルルとウジェニーは恋に落ちます。
しかし、
父が死に、一文無しになったシャルルは、
一旗揚げるために東インド諸島へ行くことになります。
さて、その後の物語やいかに…。
なんちゃって。
こんなふうに書くと、
相当テンポのいい物語に見えますが、
初めのうちはバルザックらしく、なんともかったるい。
まあ、料理で言えば、材料の説明が延々と続きます。
材料の説明はもういいから、
とっとと作って食わしてくれよ!
と叫びたくもなります。
そんな気持ちになる頃を見透かすように、
物語が急に回転し始めますから油断できません。
前半でなされた素材の説明が生きてきます。
こうなるともう止めるに止められません。
物語はこれでもかというぐらいに突き進みます。
そうして、バルザックの小説には、
必ず金の問題が絡んできます。
親子の情愛の機微にまで金が絡む。
んー、深いなあ。おもしれえなあ。

 巨いなる祖父の体の端居かな

110609_1546~01