撫でさする

二階の子見ぬ間にデカくなりにけり

今月末刊行予定の『釈譜詳節』(上)のチェックのため、
三日連続で、訳者の河瀬先生にお越しいただいた。
『釈譜詳節』は十五世紀、
ハングルが発明されると同時に
ハングルによって記された釈迦伝であり、
韓国仏教の粋、
韓国文学の古典中の古典とされるものである。
河瀬先生は、
高校で国語を教えながら独学で韓国語をマスターし、
定年前に勤め先の高校を辞し、
韓国の東国大学大学院に入学、韓国仏教を勉強されてきた。
今回の翻訳は、その成果でもあるわけだが、
わたしはこの訳業を休日、少しずつ読んできた。
静かな心で集中して読みたかったからだが、
その過程で、この仕事が大変な偉業であることに
だんだんと気づかされた。
『新井奥邃著作集』を出すときの興奮がよみがえった。
昨日、忙しい多聞君に無理をお願いし、
装丁の最終バージョンをメールで送ってもらった。
出力して先生にお見せすると、
先生は、それを撫でさするようにして、
しばらく眺めていた。
わたしは、その様子を多聞君に伝えた。
社員一同も、先生のお人柄に触れながら、
協力し、仕事の醍醐味を味わったはず。
ありがとうございました。

なつかしき人に会ひたき弥生かな

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