紫の山

 春山を狂女蹴立てて花粉かな
 前に書いたことがありますが、この季節になると、どうしても思い出します。
 父のいちばん下の弟がいまして、わたしと弟は、その叔父のことを、名前の下に「おじさん」をつけ、「まさのりおじさん」と呼んでいました。今も帰省すれば、そう呼びます。
 まさのりおじさんが小学生だった頃(おそらく低学年でしょう)、写生会があり、生徒はそれぞれ思い思いの場所に腰を据え絵を描いた。季節は春。雪が解け、近くは緑、遠くの山はおぼろにかすみ、なんとも言えない風情だったのでしょう。
 まさのりおじさんは、それを絵に写し取りたかった。山一面むらさきに塗り、おじさんは満足。写生会が終わり、担任の先生に絵を提出すると、まさのりおじさんは頭をひどく殴られた。「バカヤロウ! むらさきの山があるものか!!」。ふざけて描いたと思ったのでしょうね。
 頭を殴られたおじさんは可愛そうですが、なぐった先生の気持ちもわかるような気がします。きっと、あざやかな原色の絵の具で紫に塗りたくられていたのではないでしょうか。おぼろにかすむ、かすかな紫を絵で表現するのは至難の業かもしれません。
 まさのりおじさんは、酒を飲みながら、満面の笑顔でその話をしてくれました。たのしい思い出なのでしょう。

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Google

 ひくひくと鼻を曳かれて沈丁花
 検索エンジンで代表的なグーグルですが、大げさでなく、ほとんどの調べものは、これで済んじゃいますね。
 画像検索をすると、きれいなカラー写真が出てきますし、検索したサイトによっては動画が出てきたり、音声付きのものまであります。匂いまで出てきたら最高ですね。
 このごろご無沙汰している知人や友人を思い出して、いま何をしているのだろうと、遊び半分で検索すると、写真付きで現れたりします。へー、こんなことしてるんだ、と驚くこともしばしば。
 時間は平等に過ぎていくようです。

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朝鮮菊

 駄菓子屋の裏の垣根の沈丁花
 父のいちばん下の妹と電話で話した。このごろ、叔母は庭に花壇をつくり季節季節の花を楽しんでいる。
 亡くなった祖母が花いじりの好きな人だったので、花好きの血をだれよりも受け継いだのだと兄姉たちに言われているようだ。
 花壇づくりの楽しさと難しさをひとしきり話した後で、叔母は、祖母がいちばん好きだった花が何か知っているかと言った。しばらく考えたが、答えが浮んでこなかった。「朝鮮菊…」と叔母は言った。
 電話を切った後で、さっそくグーグルのイメージ検索で朝鮮菊をしらべてみた。たしかに祖母の周りには朝鮮菊があった。銀座アスターのアスターも、この花に由来するそうだ。
 五月に帰省したら、叔母の花壇を見てみようと思う。

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気功教室

 日だまりの丘の光りのフキノトウ
 昨日は週一度の気功教室の日。用事があって少し遅刻して行ったたのですが、教室に入りきれないぐらいの大入り満員。数えてみたら、先生を入れて22名いました。そんなに大きな教室ではない(大きな教室がたまたま取れなかったのでしょう)ので、蠕動(じゅうどう)をするときなど、目をつむっていると、横の壁や机の端や隣りの人の指先に触れてしまいます。少ないときは5、6人のときもありましたから、隔世の感(大げさか)があります。
 22名のうち、男は先生を含め5人。あとは女性。『壮快』やら『スンダリ』やら『週刊女性』にダイエットに効く功法として大々的に取り上げられたので、その影響かと思われます。
 来月にはまた『からだにいいこと』という月刊誌にカラー4ページで特集されることになっていますので、教室がいよいよ生徒であふれるかもしれません。

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養生の実技

 春遅し光瀾之観待ちわびて
 五木さんの本です。前に一度読んだので、今回は再読。
 巻末に「私自身の体験と偏見による養生の実技100」というのがあります。その?に、「セックスに基準はない。天上天下唯我独尊(てんじょうてんげゆいがどくそん)の気持ちで、その人なりのスタイルをつくる。多すぎて悪いこともなく、少なすぎて害もない。一生女性と接しなかった法然は八十歳まで生き、五人の妻をめとった蓮如は八十五歳で逝った。各人各様に不言実行のこと。」とある。
 不言実行って…。たしかに、他人にしゃべることではありませんけど。セックスを不言実行するというのが、なんだか可笑しい。
 その88(○つき数字がありません)、「水を多量に飲んだほうが体調がいい人は飲めばよい。水を飲まないほうが体調がいい人は飲まないほうがよい。玄米も、サプリメントも、酒も、タバコも、セックスも同じ。」これもなんだか、そこはかとなく、可笑しい。
 と、書いてきて、ふと思ったのですが、前に読んだときもここで笑って、そんで、やっぱりそのことをこの日記に書いたのではなかったかしら。呆けてきたか!?

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校正校閲

 言葉もて見えぬものあり花万朶
 著者から原稿をいただき、じっくり読みながら、文章と内容の気になるところをチェックしていく。著者が気づかなかったことを見つけ、調べたり指摘することも第一の読者たる編集者の仕事だ。
 時に、ぶつぶつ念仏でも唱えるようにゲラに向き合うこともある。
 再校、三校まで、早くて三ヶ月、平均して五ヶ月、半年ぐらいかかるだろうか。それ以上の場合もある。
 この過程を通して、だんだんと原稿のなかに潜むメッセージが形となって現れてくる。少しずつ彫っていくことで木の中の仏さまが姿を現すようなものかな。
 孤独な苦しい作業だけど、ぼんやり見えてくる姿に触れることは、この仕事の楽しい瞬間だ。

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1℃

 味噌汁はえのきとナメコ春遅し
 朝、目が覚めると、おや、と思います。あまり寒くないぞ。まだ眠くはありますが、えい! と起き出して温度計を見ると、17℃。1℃違うだけで、こんなに暖かく感じるものなんですね。
 乾布摩擦から始めてダンベル体操、気功まで、朝の一連の運動を行うと気分もスッキリ。もう少ししたら、また近所の皆さんと公園に集まって気功をしようと思っています。

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