春風を孕み洟垂れ又三郎
ガラガラっと音がして、向こうの車輛からこちらの車輛へ移ってきた、30代でしょうか、男の人がありました。ドアの近くに座っていた人たちは一斉に眼を上げました。
男はドアを閉めずにそのまま真っ直ぐ車輛の端まで歩いていきました。わたしもつられて、男の移動するラインを飛行機雲を追いかけるように眼で追いました。
男が立ち止まったのを確認し、首を元の位置に戻すと、そばの人たちも同じように眼で追っていたのか、ほぼ同時に元の姿勢に戻ったようでした。
気が流れ、気が収まったようで、ちょっと面白かったです。