春風駘蕩

 風はらみ宙に億兆馬糞かな
 子供時代、ですから、今から40年以上前になりますが、秋田のほとんどの農家では馬や牛を飼っていました。自家用車などまだ持っていない頃のことです。
 小学校の行き帰り、自動車が走る代わりに、馬車がゆっくりのっそり行き交っていました。スピードがそんなにありませんから、ランドセルをガタガタさせて走っては、荷台の後ろにつかまり、しばしいっしょに小走りしたものです。
 馬車は、馬に曳かせます。馬は動物ですから、したいときに糞をします。ところかまわずです。道端には、よく馬糞が転がっていました。馬は草食性ですから、糞といってもそんなに臭くなく、汚いといった印象もあまりありません。
 春になって雪が解け、乾いた風が吹いてくると、ぬかるんだ土が乾いてパンパンに白くなり、フキノトウが芽を出します。美空ひばりさんではありませんが、おらだぢのいぢばんすぎなきせづだなや〜、というわけです。
 乾いた土は宙に舞い、目を開けていられないこともありますが、乾いた土といっしょに、乾いて粉々になった馬糞も宙に舞い上がります。
 土と馬糞で空が真っ白に、などということはありませんが、秋田の人は皆、馬糞を吸って大きくなった、と教えてくれたのは、高校の日本史の先生でした。
 花粉より馬糞取り込み秋田びと

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