一雨ごとに

 四月も半ば、天気予報によれば最高気温が20度になる日もあり、さすがに暖かくなった。この季節、新入生、新入社員、新人研修と「新」のつく言葉が多く、街にも「新」が溢れている。新春あり新緑あり。
 わたしが入った秋田の高校は、全国でも四番目に歴史が古い(記憶に間違いがなければ)とかで、この季節になると必ず思い出すことがある。
 応援歌。歴史が古いせいで、とにかく歌の数が多い。新入生は短期間にそれを全部覚えなければならない。記憶力のいい子はいいが、十いくつもある応援歌を1週間かそこらで覚えられるわけがない。と、誰もが思ったはずだが、こわもての応援団が各教室を回り教えるものだから不平を言いたくても誰も言い出せない。必然、一生懸命覚えるように努力し、わたしはやらなかったが、通学途中の汽車(電車でなく当時はディーゼルカー)のなかでも友達同士小声で練習している生徒がいた。あれはつらかった。今はどうしているだろう。伝統を重んじ、やっぱり大声出して覚えているのだろうか。