『北上川』増刷

 自分で編集しておいて言うのもなんだが、こんなに売れるとは思わなかった。まして、増刷するなんて…。
 小社で写真集を出すのは、『九十九里浜』『東大全共闘』に次いで3冊目になるが、考えてみれば、3冊ともに一世一代のものばかり。それが読む人のこころを打ったのだろう。
 いまは、デジタルカメラ流行りだし、気の利いた写真がネットに溢れている。気の利いた写真が悪いわけではないし、ほのぼのと和ませられたり、日常を切りとって、こんな風にも見せられるものかと驚かせられもする。愛情の示し方が変わったのだろう。が、上記の写真集に収録された写真群は、<気の利いた>写真ではない。しつこく、粘りづよく、深い愛情をストレートに、膨大な人生の時間をかけて撮ったものばかりだ。
 写真集が一人歩きし、みなさんに評価されることは編集者冥利、出版人冥利に尽きるが、ただ一つ、この仕事において、やりのこしていることがある。ロシアの映画監督ソクーロフさんに、この写真集を届けることだ。ソクーロフさんがこの写真集をどう見てくれるのか。きっと響き合うものがあるに違いない。ぜひ感想を聞いてみたいのだ。