正月、秋田に帰った折、母のコレステロール値のことが話題に上った。医者いわく、太ってもいないのにコレステロール値が高いのはなぜなのだろう…。母はずっと地元の工場で働いていた。朝、出掛けに毎日必ず生卵を1個食するのを習慣にしていた。エネルギー源と思ってそうしていたのだろうが、コレステロール値の高さはそのせいではないかとわたしは睨んでいる。こっちに帰ってきてからも時々思い出すので、インターネットで調べてみた。すると、出てくるわ出てくるわ、「コレステロール値が気になる方へ」いろんな食品や飲料がある。みんないいことが書いてあるから特定が難しい。勘に頼ってコレと思うものを選び、とりあえず1ヶ月分をネットで購入し秋田へ送ることにした。コレと思うもの、コレカット。ははは。コレステロールをカットするということか。ダジャレかよ。期待薄? でも、プラシーボ効果ということもあるから分からない。期待したい。
「カンブリア宮殿」というテレビ番組に雑誌「いきいき」編集長の片寄斗史子(かたよせ・としこ)さんが出ていた。出版不況が叫ばれ、特に低迷する雑誌業界にあって、「いきいき」は43万部を誇る怪物雑誌なのだそうだ。ターゲットは50代以上の女性。コンセプトがハッキリしており、面白く見たが、番組観覧に訪れていた50代男性から質問された「定年退職したばかりだが、やりたいことが見つからない」には、片寄さんもちょっと困った様子。司会進行の村上龍も「2、3分で答えられるような問題ではない」と好意的に受け止め、男性用の「いきいき」が出ないかなあ、とも。難しい。いま、『定年後は楽園』(仮題)という本を編集している。
休日、気功に関する2冊の本を読んだ。『からだの自然が目を覚ます気功入門』『気功生活のすすめ』。特に後者は、中国発祥の禅密気功についての考え方と実際について写真入りで解説しており面白く、わからないところも多々あるけれど、合点のいく記述が多い。
「気」というと、念力で人を倒したり野生の動物を眠らせたりなど超能力みたいに扱われたりもするが(そういう側面もないわけではないけれど)、それは特殊な例で、基本的には、だれもが健康で楽しく生活するための方法だというのも頷ける。また背骨から気を取り込み、気を観、全身に気を流していくときの背骨の重要性は、西式健康法、操体、活元、野口体操、竹内レッスンなどとも重なる内容で納得できる。飽きない程度に、気持ちいいところから始めてみようと思う。
小社の本づくりについて最近よく口にする言葉に「会社はまだ8年目で新しいですが、編集は極めてオーソドックス、古臭いといってもいいぐらい」がある。例に違わず出版業界もパソコンが普及し、パソコンなしでは夜も日も明けないのは他と同様だが、パソコンがいくらバージョンアップしても、パソコンが校正・校閲をしてくれるわけではない。農機具がいくら優秀になっても、その年の天候が作物の出来不出来を決めるように、本づくりにおいて大切なのは、著者との密な触れ合い、コミュニケーションの質だ。極端なことを言えば、本はその結果の産物。著者と会わずにデータだけ受け取って本をつくることなどあり得ない。著者に会うことで、その表情や口ぶり、自宅なら門構えや部屋の雰囲気、庭の静けさ、廊下の暗さなどから、送られてきたデータだけでは読み取れなかったもろもろが見えてくることがある。本にはそういうものも反映するし、また、反映させなければならないと思っている。オーソドックス、古臭い所以だ。
教育学者の上田薫先生宅訪問。小社創業前に縁あって訪ねて以来だから8年ぶりになる。先生は来年米寿を迎えられる。記念すべき年を前に小社から先生の本を刊行することになった。先生は、現在も各地から依頼があれば講師として出かけておられる。また、書くことは楽しいと。ただ、家にじっとしていると体も心も具合が悪く、外へ出ていたほうが調子がいいらしい。そうかと思った。ほかの時代に比べると今は圧倒的に外へ出ることが少なくなっているのではないか。外へ出られない人ももちろんあるけれど、何か基本的なことのように、先生の話をうかがって思ったのだ。
午前中、写真集を出したいという企画会社の社長がみえられ、応対。まとまりそう。午後、旧友でミュージシャンの上田さんが、一緒にツアーを組んでいるオランダ人のアド・パイネンブルグさんを連れ来社。アドさんに写真集『九十九里浜』を見せ感想を聞くと、ひとこと、ビューティフル! 銀行の小社担当の方が第7期の資料返却に。S印刷会社のY本さんが同僚を引き連れ来社。おや?と思ったら、今月いっぱいでS社を辞め、新たに編集の仕事に就くらしい。今度の担当はHさん。よろしく。新刊の献本分を引き取りに近くの郵便局から二人、台車を持って登場。夕刻は宅配便の2業者。
専務イシバシから借りた五木寛之と望月勇の対談集『気の発見』がおもしろかったので、望月さんの単著『いのちの力』も読んでみた。対談でエピソードとして語ったことの背景がわかって興味深く、こちらも一気に読了。望月さんはロンドン在住の気功家。
『いのちの力』のなかに、こんな話が紹介されていた。瞑想することが難しいという弟子に師匠が、それなら瞑想は要らぬ、ところでお前の好きなものは何か、と質問。弟子は、田舎に残してきた子牛がたいそう好きです、と答えた。師匠は、では、その牛のことを思い浮かべなさい、と告げた。数日経っても弟子が部屋から出てこないので、おかしいと思った師匠が部屋の外から声をかけると、角がつかえて部屋から出られません…、好きな子牛のことを思っているうちに、弟子は、いつしか子牛そのものになっていたという話。
瞑想というと何やら難しそうだが、好きなものを思い浮かべることから始めてはと望月さんは勧めている。