あしゃしゃしゃしゃす

 

・秋雨や建設機械の動きをり

 

横浜国大での打ち合わせが終り、
バスに乗車。
今後の段取りなどを考えながら外を眺めていると、
「あしゃしゃしゃしゃす」
のんびりまったりと。
あまり気にせず、
そぼ降る雨に濡れた街の景…
「あしゃしゃしゃしゃす」
またも。
気になり始め、
前の方を見ると、
バックミラーに運転手の姿が映っています。
口にマスク。
風邪をひいているのかな?
予防かな?
停車場にバスが停まり、
三人が降りていきました。
ドアが閉まって、
「あしゃしゃしゃしゃす」
あ!
分かった。
あしゃしゃしゃしゃすと聞こえていたのは、
あしゃしゃしゃしゃすではなく、
はい、発車します、
でした。
そう思って聞くと、
はい、発車します。
でも、
あしゃしゃしゃしゃす、
と思って聞けば、
あしゃしゃしゃしゃす。

 

・停車場の列を縮める秋しぐれ  野衾

 

ヒモ絡む

 

・台風過青やますます濃くなりぬ

 

メガネストラップをつかうようになって、
電車内での読書が
快適になりました。
ドア近くの
なるべく人の少ない場所に立ち、
メガネを外し
首にぶら下げます。
文庫本を取り出し、
栞のオモテがわのページ、
段落の初めから読み始めます。
(段落の切れ目がないときは、
前回終ったところに爪でしるしを付けているので大丈夫!)
快適快調。
と、
そばで咳する声のあり。
見れば口にマスクをしていない。
目立たぬよう
急ぎポケットから
マイマスクを取り出し風邪菌防御。
やがて目的地に着き、
ドアが開いてホームに立つ。
マスクを外しメガネをかけようとするも、
マスクのヒモとメガネのヒモが
こんがらがって、
どれがどれやらわからない。
そんなこともあるきょうこの頃であります。

 

・ふりそそぐひかり漏らさぬ薄かな  野衾

 

眠れぬ夜は

 

・いろはなし雑木紅葉のちりぬるを

 

夜中目が覚め、
なにということもなく
スッとふたたび眠ることもあれば、
なかなか寝付けずに、
あっちにごろり
こっちにごろり
したりすることも。
そういうときは、
おとなしくして昔むかしのことを思い出します。
いろいろいろいろ。
しているうちに、
過去のなつかしくも厳しい
現実を飛び越え、
ありえない球速180キロの
ピッチャーになったり、
アンパンマンのような
スーパーヒーローになってもみたり。
画用紙も要らないし、
話す相手も要りません。
そんな夢物語を勝手デタラメに描いているうちに、
いつの間にか、
夢の世界に舞い戻っていくようです。

 

・桃尻の馬に揺られてぼくぼくと  野衾

 

語の浸透

 

・霧しぐれ分け入る山の深さかな

 

ことばを知って使い始めても、
初めはなかなかしっくりきません。
しかし使い使い
しているうちに、
枝葉がとれ
幹がだんだん太くなるように、
自分のからだと心になじんできて、
しみじみ、
その語しかないと思えるような瞬間がやって来ます。
俳句の季語はもちろん、
ごく一般的なことばでも、
身に着ける服に似て、
ことばに浸透し、
ことばが浸透してくる時間を
大切にしたいと思います。

 

・山路来て荷を下ろしけり秋桜  野衾

 

世間は

 

・曼殊沙華こころ休めと風立ちぬ

 

わたしが日々感じていることのなかに、
「世界は広く世間は狭い」
がありますが、
今度は、
少し前まで集中的に読んでいた
小西甚一を研究する論考が届きました。
大著『日本文藝史』にいたる若き日の小西に焦点を当てるもので、
ササっと読むつもりが、
つい夢中になって読んでしまいました。
まことに、
世界は広く世間は狭い!
いちばんは、
なんといっても、
キーコーヒーのつけまの娘。

 

・山ぼくぼく六国峠霧深し  野衾

 

眼鏡ストラップ

 

・商店街白髪吹かるる秋の風

 

近くの細かい文字は裸眼で見るので、
どうしてもメガネを外すことになります。
机上に置いたり、
頭上に置いたり、
しているうちに、
そのことを忘れカタンと落としたり。
ということで、
メガネストラップを買いました。
メガネを外したとき首にぶら下げておくヒモですね。
これで落とす心配はなし!
なのですが、
慣れぬせいか、
ヒモが顔の横にあたって
なんぼか気になります。
少し慣れるまでのがまん。

 

・秋晴れや老婆の頬に紅の点す  野衾

 

頭に忘れる

 

・留まるな先へ先へと鰯雲

 

老眼が入ってきたせいか、
近くを見るのに
このごろは、
眼鏡を外すことが多くなりました。
デスクワークをしているときは、
だいたい机上に置きますが、
電車内で文庫本を読むときなど、
外した眼鏡を頭の上に置くことが多い。
たまに忘れ、
アレ!? 眼鏡は? メガネメガネ?
カタンと落ちて
やっと気づくことも。
それにしても、
廊下が、
いや老化がはやくねーか?
廊下を走ってはいけません。
老化を急いではいけません。
急ぐなよ急ぐなよ。

 

・風遣りてやがて身を上ぐ薄かな  野衾