多機能トイレ

 

・夏の日のすることもなし仮寝かな

先週土曜日は鍼灸の日。
横浜駅で電車を乗り換え、東横線の元住吉駅下車。
上りエスカレーターで改札口へ。
そのまえにトイレへ。
わたしの行動はだいたいが習慣化しています。
ふと見れば、
多機能トイレのランプが消えており、
使用可能な状態を告げています。
時間に少し余裕がありましたから、
なかが広い多機能トイレでゆっくり用を足してから
と思い、
ランプの上のセンサーへ掌をかざします。
スーと、
静かにドアが開いていきました。
ら、
あっ!
あっっ!!
帽子をかぶった中年の男性がパンツを下し、
便器にまたがっています。
(注:いまはズボンのことをパンツと言い、従来のパンツもパンツで
紛らわしいわけですが、便器の男性はズボンもパンツも
いっしょに下していましたから、「パンツ」だけで話が済みます)
わたしも驚きましたが、
便器の彼はもっと驚いたでしょう。
およよよよ~~~~、
みたいな、
変な声を発し、
ズボンを、
いやパンツを下したままの状態で、
ドアを閉めるべく立ち上がってきました。
それより一瞬速く、
「スミマセン!!」
大声であやまり、
急いで外のセンサーに掌をかざしました。
何事もなかったごとく、
ドアはスーと閉まりました。
その後わたしは、
ふつうの男子トイレで用を足し、
それから改札を抜けて外へ。
ほどなく鍼灸院へ到着。
指示されたベッドに横になってからも、
あの男性、
ズボンとパンツに
ウンコが着いてしまったのではないか
と、
そのことが頭を離れません。
運が付いたか?
冗談を言っている場合ではありません。
にしても、
使用中であるにもかかわらず、
どうしてあのランプが消えていたのかが不思議です。

・傘差さず雨のなか来る鯲売り  野衾

七月

 

・今月は盛夏来るぞと勇みをり

今日より。
爪の伸びるのも速いが、月日の経つのも速い。
光陰は矢のごとく、
タイムは、
ライク・アン・アロウと
フライし、
月日は百代の過客であれば、
いたしかたもなし。
無い髪の伸びも速いわけだなぁ。
明日は針灸。
とりあえずデトックスして、
総ざらい。
いろいろ考えることもあるけれど、
まあなんとかなるさの気持ちも忘れずに。
みなさま、
どうぞよい週末を。

・気づくまでその名も知らず半夏生  野衾

厚い茄子

 

・蜘蛛の巣の雨の滴の地に落ちず

昼、野毛にある
なじみの店にイシバシと行きましたら、
女将さんが、
「きのう漬けたものですが、どうでしょう」
と言って、
茄子の漬物をくださいました。
女将さんの漬物は絶品で、
いついただいてもハズレ無し。
しゃきっとした茄子がほどよく漬かっており、
きゅっきゅっ
とする食感を楽しんでいるうちに、
あっという間に、
最後のひと切れになりました。
イシバシおもむろに、
また及び腰に、
「あのー、すこし厚いようですが…」
切り身の厚い最後の茄子を
自分が食べていいのか
と許可を欲しているようで、
その言い方があまりに可笑しく、
呵々大笑。
「いいよいいよ。食べたらいいじゃん!」
そこでイシバシ、
厚手の切り身をつまんで口中へ。
と、
「あら。口のなかで二つに割れた」
「バカ野郎、あはははは…。いまさらどうするんだよ」

・梅雨の中くっつきそうな傘が行く  野衾

ひとの手

 

・茎紅きミズを並べて友も居て

本は物なので、
頭で考えるだけではつくれません。
自分の手が必要だし、
多くは
ひとの手を借りなければなりません。
会社のひとの手もあるし、
外のひとの手もあります。
そもそも本には著者がいます。
ひとの手が
頭で考えたとおりに動けば
事は単純ですが、
じぶんの手だってじぶんを裏切ることがあり、
まして他人の手となると、
こちらが思うように、
願うように
動いてくれることはありえない、
と、
ひとまず考えたほうがよさそうです。
会社で若いひとを見ながら、
物をつくるには、
ひとの手を
じぶんの手として使うことが欠かせない
と改めて思い知らされます。
がんばれい!

・ふるさとの窓の灯りやミズタタキ  野衾

氷っこ

 

・まな板に恨みなけれどミズタタキ

秋田では
いろんなものに「こ」を付けてよぶわけで、
氷も氷っこ。
氷を氷っこと呼称するだけで
かわいいというか、
いとおしいというか。
きのうは、
ビールの代わりに、
水に氷っこを入れて晩酌としました。
アイスコーヒーに、
ただの水にでも、
氷でなく氷っこを入れて飲むと美味しく感じるから
不思議。
だまされたと思って、
みなさんもぜひ氷っこを。
ぶっかき氷の場合だと、
ぶっかき氷っこ(ぶっかきごおりっこ)
となって、
やんちゃな男の子みたい。
ですが、
ぶっかき氷っことは言いません。

・叩くたび山の木霊のミズタタキ  野衾

しきらどした

 

・嘴太やお前も傘が欲しいのか

クマを避け、
ピッピを鳴らしながら採ったというミズが先週末とどき、
つぶしてたたいて刻んでから、
炊き立てのご飯にのせていただきました。
んっめー!!
こでらえねー!!
さっそく秋田に電話。
父も母も満足気。
ミズ採りの日、
腰を痛がる母は、
クルマのなかで待機していたのかと思いきや、
語気強く否定されました。
「なだど。おいも採ったたでゃ」
(注:なにを言っているの。わたしも採ったんだよ)
クマに襲われず家に帰ってきたら、
首のあたりに違和感を感じ、
手をやったら
ヒルが張り付いていたのだとか。
でもたいしたことはなかったそうです。

そこで一句、

山よりの清きこころのミズを食ぶ

おかげで、
こころもからだもきれいさっぱり、
すっきりとしました。
秋田ではこういう感じを、
しきらどしたな!
「し」の発音が標準語とちがって、
歯の近くに舌をもってきて発音します。
ではどうぞ。
しきらどしたな!
はい、よくできました。

・閑としてアシダカグモの居座れり  野衾

アイスコーヒー

 

・ゴミ網の驚き貌の守宮かな

このごろわたしのいちばんは、
手作りアイスコーヒー。
豆を挽き、
サイフォンでコーヒーを淹れるところまではいっしょ。
ビールジョッキに前もって
ぶっかいた氷っこ
(標準語では氷。秋田で氷っこ)
を入れておき、
淹れたコーヒーを
氷っこの上からじゃーと注いだら出来上がり。
いたって簡単。
これ飲んだら、
缶コーヒーなんて飲めねーよ、
飲むけど。
北鎌倉駅そば儀平の
かりんと饅頭なんか添えたら、
そりゃもう最高!

・雨やんで網をねぐらの守宮かな  野衾