蟬

 

・かき氷あります江戸の暖簾かな

朝から蟬が鳴いていて、いよいよ夏本番。
一昨日だったか、
ずいぶんデカい声で鳴いてるなぁ
と思い、
窓に近づいて見上げたら、
ベランダの天井に張り付いているのでした。
だんだん腹をぷくーと膨らませたり、
平らにしたりしながら、
ミーンミーンミーンミーン。
写真を撮ろうとスマホを弄っているうちに、
どこかへ
飛んでってしまいました。
近くの階段では、
務めを終えた蟬が体を二つに割られ
死んでいました。

・草の香や蟬が鳴いてる鳴いてるよ  野衾

本の旅

 

・靴下を干しサンダル履きの裸足かな

このごろは、
近場でウォーキングをするぐらいが関の山、
旅らしい旅を
あまりしなくなりましたが、
本を読んでいて、
ああこの感じ、
ちょっと旅に似ているなぁ
と思うことがあります。
古いものを読む機会が増えまして、
そうすると、
旅が地理的な移動であるのに対し、
本は、
本を読むことは、
時間的な移動といっていいかもしれません。
ページを繰っているうちに、
どこでもドアならぬ
どこでも椅子、
魔法の絨毯ならぬ
魔法の椅子、
愛用の椅子がタイムマシンになって
時間旅行の扉がひらきます。
いまは鎌倉時代を
ぽちぽち歩いています。

・梅雨の季の最後っ屁のごと雨止まず  野衾

牛乳

 

・擬態とや灰色の蛾がドアの下

牛乳は子牛が飲むものと決めているので、
自分で買って飲むことはありませんが、
自作アイスコーヒーに
入れてみようかと、
何十年ぶりかで牛乳を買いました。
デカいパックを買いまして、
アイスコーヒーに入れても残りましたから、
牛乳単独でグラスに入れ
久しぶりに飲んでみました。
お、
美味しい!
何十年もナマズにいた
いや
飲まずにいたあいだに、
こんなに美味しくなっていたとは。
いやはや。
わたくし、
思い込みの激しい人間でありまして、
思い込んだとなると、
続けるものは死ぬまで続け、
やめるとなったら
だれが何と言おうと断固やめる性分が災いし、
知らぬ間に
進化発展を遂げているものが
他にあるやもしれません。
なんかないか。
なんか。
と。
ん!?
くさや。
くさやはどうだ。
あれだけは絶対食えない
と決めてから、
これまた二十年以上たちますが、
ひょっとしたら
ひょっとして…。

・香水の香や二の腕の近かりし  野衾

コーヒーの大学院

 

・薄衣のこころほんのり気もそぞろ

何年前か十年前か、
もっと前だったような、
このごろ時間感覚がおかしくなっておりまして、
正確なところをとんと失念、
だれに紹介されたわけでもなく、
ふらっと入ったコーヒー店。
その名は
「コーヒーの大学院」
ブレンドコーヒーを頼んだら、
む、
むむ、
と美味しかったので、
以来、
そっち方面へ出かけたときは、
ちょいと立ち寄り、
コーヒーかアイスコーヒーを所望するのが常。
きのうは三時に神奈川新聞。
用事を済ませ外へ出るやかんかん照り。
関東も明けたんじゃないの?
迷うことなく
「コーヒーの大学院」へ。
入り口付近の円テーブルの席に座し、
本とペンを持つ聖職者を描いたステンドグラスを見ながら
アイスコーヒーを。
しばらく金魚と戯れていました。

・夏のハト小首かしげて知らんふり  野衾

ルビーロマン

 

・海の日の海をテレビで見てゐたり

数年前、
お盆に帰省した折、
近くのショッピングセンター
(秋田の皆様はご存知のアマノ)
に出かけ、
どでかいブドウを目にし、
「あ。俺の知らぬ間にずいぶんでかいブドウが開発されていた!」
と叫んで買ったら
プラムであったという
笑うに笑えぬことがあり、
家人にはずいぶん笑われましたが、
なんと、
どでかいブドウは
実際に開発されていたのでした。
その名はルビーロマン。
でかいのになると、
ゴルフボール大か
それよりも大きいといいますから、
これは食べずにいられないでしょう。
かなり値が張るようですから、
ひと房とは言いません、
三個で十分。
この夏の目標です。

・梅雨明けや眠りたらふく木々薫る  野衾

狸御殿

 

・しずしずと廻って見たき日傘かな

わたしが住んでるここ御殿山、
むかし殿様が住んでいた
という噂もないのに、
なにゆえ御殿山?
といぶかしく思っていたところ、
先日、
いきなり目の前に
タヌキの親子が登場し、
三秒ほど
正面からガキッとにらみ合いまして、
そうか、
ここは御殿は御殿でも、
タヌキ御殿であったかと納得がいった次第。
かの親子にしてみれば、
もともと自分たちの山なのだぞ
とでも言いたかったか。
また来ないかなぁ。
少々の疲れなんか吹っ飛ぶんだけどなぁ。
株を守る宋人な気分。

・ビール干してつぎは何にしようかな  野衾

ノドで飲む

 

・夏休み指折り数ふりなぴかな

牛乳は牛の子が飲むものとみなし、
なのでわたくし、
基本的に牛乳は飲みません。
が、
若いころは、
好んで飲んでいた時期がありました。
汗を掻き
ノドがからからになったとき、
牛乳をごくごくごくと
音たてて飲むと、
牛乳が
なめらかな水のように感じて
美味かったあ!
このごろ
ノドを鳴らして飲むのは、
牛乳でなくビア。
ひと口目のビールというものは、
あれはジュースですね。
なんとも甘く感じられて。
そんで、
クハ~~~ッ
と息を吐く。
至福の瞬間。

・端居して祖母の草取り見てをりぬ  野衾