魚屋の息子

 

・冬鳩やいまキリストの受胎せり

今年の読書のいちばんは、
なんといっても
小西甚一『日本文藝史』全五巻でありますが、
小西先生の生家が
伊勢の魚屋だったということが
またなんともおもしろく。
古代から現代までの日本文藝を
豊かな海と見たとき、
先生はそこから大魚鮮魚を釣り上げて、
絶妙の包丁さばきで解体し、
その美味なるところを
わたしたちに供してくれたともいえるでしょう。
小西先生の書く本は
どれも、
実に大らかで、のびやかで気持ちがいい。
このジャンルの本を読み、
こういう感想を持つことはまずありません。
わたしが知らないだけなのでしょう。
しかし、
その感触が連想を「マルコによる福音書」へと誘います。
第一章一六節
「さて、イエスはガリラヤの海べを歩いて行かれ、シモンとシモンの兄弟アンデレとが、
海で網を打っているのをごらんになった。彼らは猟師であった。
イエスは彼らに言われた、
『わたしについてきなさい。あなたがたを、人間をとる猟師にしてあげよう』
すると、彼らはすぐに網を捨てて、イエスに従った」
*
橋本照嵩『石巻かほく』紙上写真展
の四十一回目が掲載されました。
コチラです。

・冬枯れの道に小さき箱ひとつ  野衾

小西先生

 

・幻に枯野憧る日ともなる

『姿を変えたキリスト みなし子を育てたシスターたち』の著者
菊地先生来社。
小一時間社で話したあと、
野毛の名店「侘助」へ。
いろいろ本の話で盛り上がっているうちに、
小西甚一の『日本文藝史』に触れるや、
先生、
いきなり身を乗り出してこられた。
「一度だけ、小西先生にお目にかかったことがあります」
聞けば、
大学の図書館に向かう道だったかで、
向こうから小西先生が歩いてこられた。
身の丈が高からずひょろりとした姿ながら圧倒的な存在感。
身をかわし、
ていねいにお辞儀をするや、
小西先生、
さっと手を挙げられ歩いていかれた…。
「宝物ですね」
「はい。宝物です」
菊地先生は筑波大学ご卒業。
小西甚一は、
筑波大学の副学長も務めていたから、
幸運に恵まれたのだろう。

・高山を仰ぎ下方の枯野かな  野衾

青汁コーティング

 

・風一陣枯れ葉劇場開きけり

連載記事執筆のため
体調管理とくに風邪に気をつけてきたことは、
きのうここに記したとおりですが、
大きな風邪を引かずに
ここまできた要因として
もう一つ考えられるのは、
遠藤の青汁。
出勤時、
JR桜木町駅にある蕎麦屋川村屋にて
遠藤の青汁500ccを購入し
ポットに入れ、
出勤後に飲むようにしています。
一日まじめに働いて、
飛んで翌朝、
尾籠な話で恐縮ながら、
トイレに用足しに行くや、
きれいな緑の○○コが水に落下。
腸内フローラの驚異が世間を賑わしたことも耳に新しく、
ひょっとしたら、
朝に飲んだ青汁が
腸内に皮膜をつくり、
その後
昼と夜に、
食事を摂っているにもかかわらず、
腸内を守ってくれているのではないか、
それで風邪菌をよせつけないのではないかっ、
そんな風にも思えてくるのです。
ということで、
今日も元気に青汁だあああ!!

・小春日を猫と戯る翁かな  野衾

連載終了

 

・雪をまつ東の海のかほりかな

振り返れば、
まるで下りてくるように、
毎年あたらしい仕事をいただきます。
月ごとの対談をユーストリームで配信したり、
女子大学の講壇に立ったりと。
今年は、
二月から始まった「石巻かほく」紙の連載がそうでした。
途中三度の休みがありましたが、
(ありがたかったー!)
予定していた四十一回の連載が
今月十二日掲載分にてめでたく終了。
ほぼ一年!
そのつど、
ここにリンクを張り、
みなさんにも読んでいただきました。
この間、
もっとも気をつけたことが
体調管理。
とくに風邪を引かぬよう、
最大細心の注意を払いました。
風邪を引いたら、
うつ病と同じく
なにも湧いてこず、
なにも下りてこず、
文章を書くことなどもってのほか。
メガネの曇りなどなんのその、
マスクをノリで顔に貼り付けるようにして
風邪菌を防御、
困難を乗り越えた次第です。
さて来年は、
なにがどなたが待っているのでしょう。

・佇みし白きコートの裾のうら  野衾

愚かを知る

 

・連載の終りし夜や鍋料理

テレビを点けてやっていれば必ず見る番組
「開運!なんでも鑑定団」
きのう見ていたら、
退職金五百万円のうち、
四百万円をつぎ込み、
唐三彩の小壺をはじめ、
一点百万円のもの四点を購入した
初老の男性がスタジオに登場しました。
骨董歴二十年の総決算て。
五百万円の高級車を買うことも念頭にあったのに、
それは叶わず、
のこり百万円で軽トラックを買ったそう。
自身の見立てと感性には
絶対の自信があると言っていたのに、
その自信が
そもそもの間違いなのに、
身の程知らずもいいところ、
四点いずれもまがい物。
中島誠之助のつけた値段が、
四は四でも
四千円。
泣きっ面に蜂のごとき
「もっと勉強してください」のコメント。
ご本人、
貌を歪めて
「まじめに働きます」
事ほど左様に、
己を知ることは
ひたすら難しく、
昔からいわれています。
馬鹿は死んでも治らない。
四百万円の授業料を
高いとみるか安いとみるか。
毎回、
道徳の授業を見るようで。

・忘年会経て忘れられぬことぞあり  野衾

天気予報

 

・ひとも吾も世もブレブレの嚔かな

ニュース番組の終りは、
どの局もだいたい天気予報で、
毒にも薬にもならぬ天気予報ですが、
それだからなのか
なんなのか、
割とよく見ます。
夜8時45分からのNHK「首都圏ニュース845」では、
飛行機のタラップ上で手を挙げている
安倍などでてくると、
くそおもしろくもねー、
とボヤき、
ななめで見ているのに、
最後の天気予報になると、
シャキ~ン、
正座している自分に気づきます。
今週のキャスターはかわいい桑子ちゃんだし。
桑子ちゃんは、
天気予報になると
力が抜け笑顔になります。
それはともかく。
さも科学的論理的にみえますが、
したがって
当たることもありますが、
外れることもけっこうあって、
なんだよ
雨降らねーじゃん、
って
恨めしく空を眺めること間々あり。
それだけ難しいんでしょうねえ。
いか~にも根拠ありそうなのに、
ハズレる、
というところが
とても気に入ります。
これって、
「開運!なんでも鑑定団」を見る感覚に似ている。
骨董商から勧められるまま、
本物とみなし、
うん百万円もつぎ込んだのに、
三千円とか言われてショックを受ける姿に、
馬っ鹿だなあと思いつつ、
好きなこととなれば
そうなるよなあと、
わが身と人間の愚かさを鏡に映されるようで、
見飽きないのかもしれません。
天気予報も同じ。

・赤ければ水洟聖夜想ひけり  野衾

句読点

 

・風邪っぴき避けてこちらも風邪っぴき

きのうは弊社の忘年会。
春風社創業の地保土ヶ谷の、
つまり、
わたしの自宅そばにある
小料理千成にて、
鍋料理を中心に、
新鮮な魚介、野菜、肉類を堪能。
例年忘年会はここと決めているのですが、
乾杯を唱えた瞬間、
ほんの三か月前にも唱えた気がし、
あれれと思いました。

まったく、
月日は光よりも速い!
どんどんどんどん速くなります。

句読点をなるべく多く使い、
改行がやたら多くなる
のは、
あるいは矢の如しの光陰を、
すこしでも遅延させ、
人生の味わいを、
深く味わい
味わいつくしたいという、
切なる願いの表れかもしれません。
コーヒーを、
わざわざサイフォンで淹れて
ゆっくり飲むのも、
かぎられた時間に句読点をほどこす
ささやかな抵抗であります。
*
橋本照嵩『石巻かほく』紙上写真展
の四十回目が掲載されました。
コチラです。

・マスクマンマスクウーマン闊歩せり  野衾