よく噛んで

 

・春の日や薄曇りゆく風の場所

子どものころから、
家でも学校でも
ものを食べるときには
よく噛んで食べなさいと言われてきました。
健康志向のひとの本を読むと百回噛みなさいとか…。
百回はともかく、
よく噛むことは、
どうやらほんとに体にいいことを、
このごろ体感します。
口に入れたものが細かく砕かれることもさりながら、
噛めば噛むほど唾液が出ます。
この唾液、
おそらくひとの入口の消化液なのでしょう。
胃や腸の負担を軽減し、
消化吸収を助けているに違いありません。
そうなると、
眠りが深くなり、
朝の目覚めが違います。
みなさん、
ごはんも野菜も肉もスウィーツも、
よく噛んで食べましょう。

・春なれど豊年乳房揺れにけり  野衾

20°

 

・チューリップ風にあおられ戻りけり

気温が二十度を超えてきました。
日によって、二十五度近くになることもあり。
こうなると、
寒がりのわたしも、
薄皮を剝ぐように
着るものを薄くしている今日このごろ。
こんなときはジレが役だつ。
着脱が楽。
ジレ。
チョッキ、ベストのことですが、
いまどきはジレと呼ぶのだと店の人に教わりました。
が、
チョッキ、ベストでいいじゃん、
と内心思いつつ。
チラシ、パンフ、フライヤーと
呼び名が変わるようなものか。

・容れ物のかたち清げやチューリップ  野衾

お願い一つ

 

・鶯や声のみすれど姿無しホーホケホケ

匂いに過敏になっているせいか、
女性の髪の匂いにウッとなることしばし。
それが度重なると、
香料は石油から精製される
と聞いたことがあるし、
髪に石油をスプレーしている図が浮かんでき、
立ちすくみます。
世の女性のみなさん、
無香料のシャンプーとリンスにしていただけないでしょうか。

・鶯の鳴く音ゆかしき山の朝  野衾

生きる力

 

・あと五分あと一分の朝寝かな

突風が日本列島を襲い、
秋田の実家では、
稲の種を蒔いたハウスのビニールがのきなみ剝がされ。
八十五歳の父は、
朝の三時から一睡もせず、
復旧作業に取り掛かり、
七時を過ぎてもまだ終わらない…
と、
電話口の母から聞かされた。
「生きる力をなくしてしまうよ」
父がそうぼやいたと。
近くに九つ下の弟(わたしの叔父)がいてくれるおかげで、
どんなに父の力になっていることか。
助けるの意の「助」は、
且(ショ)が積み重ねることを、
力が加えられることで、
上に力を重ねてたすけることを表す。

・朝寝してけふの予定を反芻す  野衾

コナン映画

 

・とくべつのこともなき日の朝寝かな

一年に一度のお楽しみコナン映画、
ことしのタイトルは、
『から紅の恋歌(ラブレター)』
ちっちゃいころから知っている近所のりなちゃんが
大のつくコナンファンで、
毎年この時期に公開される新作に合わせ、
いっしょに映画を観、
それから馬車道にある勝烈庵で食事をする
のが恒例になっています。
りなちゃんは今年から高校生、
友だちもいるのに、
初めに見に行くのはみうらちゃん(=わたし)
と決めているようで、
まことにありがたく泣けてくる。
ウッウッ。
映画そのものより、
身を乗り出して映画をこころから楽しんでいる
りなちゃんを隣に感じるのがうれしく、
ありがたいことよ、
と、
そう思いつつ観ているうちに、
だんだんと
映画にのめりこみ、
ドキドキしたり、
目頭を熱くするのもいつもながら…。
映画が終われば勝烈庵。
盛り合わせ定食が定番なり。
ごはんをお代わりするりなちゃんを見、
たくましくなったなあと、
目を細めるわたしは、
さしずめ孫を愛する爺か。
とにもかくにも、
うれしくありがたい一日でした。
また来年のお楽しみ。

・朝寝して気がかりありてまた朝寝  野衾

さくら

 

・花万朶本を読みたき心地せり

そろそろ散りかけてはいるものの、
ついつい立ち止まってしまいます。
桜木町にある本町小学校前のさくらがきれいで、
朝そこを通るのも楽しみ。
昼、
野毛で食事をした後、
ふらふらっと、
また小学校の前を通っていました。
さくらに引き寄せられたか。
通りがかりの女性が
スマホをかざしてさくらの写真を撮っていました。
ひかりをたたえながら
ゆっくりゆっくり散るさくらの
なんときれいなこと。
宝石も敵いません。

・花万朶すぐ先左折ラブホ在り  野衾

恒

 

・玻璃のごと煌めく薄き桜かな

つねこせんせい。
したしくそう呼んでいました。
中学校の音楽の先生で、
ブラスバンド部の顧問をしておられました
(わたしの担当はユーフォニアム)
が、
まるで親のように、
いや、
親には決して相談しないようなことまで打ち明け、
先生も
親身になって耳を傾けてくれ、
だけでなく、
倉田百三や岡潔の本を貸してくださいました。
高校に入学したとき、
パーカーの万年筆をいただきました。
高校三年間、
朝、
最寄りの駅へ急ぐわたしを、
一日も欠かさず見送ってくれました。
ジョン・レノンのイマジンの譜面を見つけ、
先生に持って行き、
ピアノで弾いてもらったこともあったっけ。
「いい曲ね…」
ときどき会社で聴いています。
先生から最後にいただいた葉書は、
いまも大切にとってあります。

・紫の野草ゆかしき春日かな  野衾