・騒がしき天のモスクや蟬の声
関東学院大学での打ち合わせの後、
バス停で時刻表を見ると
つぎのが来るまで二十分はあり、
それを待つのもどうかと思い、
京浜急行金沢八景駅まで歩くことにしました。
すでに十二時を回っていましたから、
どこかで食事をと店店を物色、
ここかな
というところに入って、
イシバシとわたしはポークジンジャーの、
ヤマギシはハンバーグの、
それぞれ定食を注文。
でてきたポークジンジャーが
思いのほか小さく気になりましたが、
このところ
小食を良としている身ですから、
ま、いっか、と。
三人食べ終えぺちゃくちゃしゃべっていたところ、
となりに女性二人が来、
ひとりがたのんだポークジンジャーの
ポークの肉の大きさに驚いた!
明らかに、
わたしとイシバシのを足したぐらい。
たしか昔のテレビ番組で、
わざと隣の客と大きさの違う肉やハンバーグをだし、
反応を見るという
ドッキリな番組がありましたが、
ちょうどそんな感じ。
有名人でないわれわれが
ドッキリに巻き込まれるわけはなく、
ならば
なぜあんなことが起きるのか、
今もって不思議千万、
人生不可解華厳の滝。
・金沢や八景見えず秋暑し 野衾
・生かされて生きるも哀し雲の峰
電子書籍やスマホで文を読むことがふつうになったおかげで、
肩肘張らずに、
紙の本を、
考えるよりも
いつくしむようになりました。
そして、
本は肉体であるなぁ、と。
ラジオで
好きな女優の話を聴くのもいいですが、
じかに接してぽつぽつと
耳を傾けているような。
たとえば志賀直哉『暗夜行路』
主人公の時任謙作と結婚することになった直子が、
謙作と一緒に歩きながら
和服姿で
まるい肩を謙作に押し付けてくる場面など、
思わず、
本をにぎる手のひらに
ほんの少しだけ
汗がにじんでくる気がします。
直子さんのからだの重さは、
しっとりした新潮文庫の紙の重さです。
・鬼やんま墓を巡りて去りにけり 野衾
・新涼の碧の風の渡りけり
同期会の帰りに青りんごを買って帰宅したものの、
その日は腹がふくれており、
急ぐ必要もないので、
たのしみは翌日へ持ち越すことに。
日が改まり、
今度は弟が青りんごをたずさえやって来ました。
ありがたし!
事前にメールし、
青りんごのことを尋ねていたのでした。
前日わたしが買ったのと合わせると
4+5=9
帰省のあいだ食べ続けてもじゅうぶん間に合います。
ウッシッシ。
というわけで、
よく水洗いし皮ごとガブリ!
さらにガブリ!
ガブリ。
ガブ。
ふむ。
はて。
もひとつガブリ。
む、む、む、
こんな、
あじ、
だった、
か?
もうちょっと、
なんというかこう、
もう少し…
つまり、
記憶のなかの青りんごとあまりにちがいます。
横浜に帰る日の朝まで
「ちがうちがう」を唱えつつ
連日食べましたが、
記憶と現実の断層を埋めることは
とうとうかなわず終ってしまいました。
・新涼や鳥海山に雲かかる 野衾
・首に来て首を離れぬ残暑かな
8月11日同期会の日、
電車で乗り合わせた同期の友人を先にやり、
わたしはひとり、
秋田駅一階の産直市場・みんなのやさい畑に直行。
青りんご、青りんご、青りんご、と。
ぐるぐるぐるぐる探していたら、
あっ、
あったー!!
四個入りがビニール袋に入って350円。
二袋あるではないか。
店の人に、
「これは青りんごですか?」
「そうです」
「青りんごですね?」
「そうですよ」
「ここは何時までやっていますか?」
「七時までやっております」
「七時までやってるんですね?」
「はい。七時まで」
同期会にビニール袋に入った青りんごを持って
というのもいかがなものか
と思い、
閉店時刻を確認し会場へ。
たのしく愉快な同期会が終るやいなや、
二次会に誘われるも決然と断り、
秋田駅へ直行。
産直市場、産直市場、産直市場、
呪文のように。
ん!?
あ、よかった!
ひとふくろだけ残っていました。
今年のテーマの青りんご、
ようやくゲット!
食うぞー!!
・還暦の祝ひ賑はふ涼しさよ 野衾







