・罅割れて塩噴く夏や石の段
かつて弊社から『面白南極料理人』を出したことがありました。
その後、
堺雅人主演の映画にもなり、
おぼえておられる方がいるかもしれません。
創業間もない弊社にとりまして、
かなり売れた部類の本でした。
取次、書店からの注文も多く、
なかには、
「めんしろなんごくりょうりにん」
「めんぱくなんごくりょうりにん」
など、
思いもしない読み方をされたり。
いまとなっては
なつかしい思い出。
このごろの例でいいますと、
『石巻片影』→「いしまきかたかげ」
『松本清張の葉脈』→「まつもとせいちょうのはみゃく」
が出色でしょうか。
漢字の読みは、
げに難しく、
注文を受け、
はてそんな本を出していたかしらと、
意表を突かれることもあります。
・罅割れて汗噴きだすや石の段 野衾
・骸かと摘まめば勁き蟬の羽
父と母は三十代ですかね。
わたしはたぶん小学生、
弟は幼稚園生か、
まだか。
動物園はそのころ千秋公園にありました。
砂利道を歩いて行った記憶があります。
昼を食べてからだったか、
動物たちを見てから
昼にしたか、
弟は中華とラーメン、
中島のテッチャもいたかもしれず、
父と母が、
わたしと弟を動物園に連れていってくれたことが、
おもしろいと思います。
いま尋ねたら、
なんて答えるでしょう。
もう昔のことで分からない、
それとも、
あたりまえのことを訊くな、
か、
わたしと弟を
動物園に連れていってくれたことが、
不思議におもしろいと思います。
・雲の峰村を出てから五十年 野衾
・遮断機の先やゆらりと夏の海
朝、
コーヒーを淹れながら少しずつ読んでいるアンデルセンの
『即興詩人』
訳者は森鷗外。
文語文で書かれており、
すらすら読むことは叶いませんが、
こころを落ち着け
ゆっくりすすむと、
物語の世界が静かにひらけてくるようです。
口語文と比較し、
内容を理解するのに手間取るのに、
なぜあえて文語訳をえらぶかといえば、
ひとつにはリズム。
つい音読してしまいます。
無駄を省いた文語のリズムが心地よく、
からだ全体に響いてきます。
画家で絵本作家の安野光雅さんが一時
文語文に嵌ったことがあった
そうですが、
むべなるかな。
さて、これからコーヒーです。
・青々と息深くなる雲の峰 野衾







