お盆

 

・艸の香と土のにほひや夏の朝

 

きょうは九日。
七日の朝、秋田に電話をしたら、
父と母は四時に起きて祖父母が眠る墓地へ行き、
墓を掃除してきたとのことでした。
村のほかの方たちも
つぎつぎ掃除に訪れたそうです。
墓地の掃除が終わって家に帰り、
今度は仏壇。
きれいに掃除をし、
年に一度の御霊を迎えます。
*
弊社は、8月10日~15日夏季休暇といたします。
よろしくお願いします。

 

・夏草や雨にたたかれ尚かほる  野衾

 

書名は難しい

 

・罅割れて塩噴く夏や石の段

 

かつて弊社から『面白南極料理人』を出したことがありました。
その後、
堺雅人主演の映画にもなり、
おぼえておられる方がいるかもしれません。
創業間もない弊社にとりまして、
かなり売れた部類の本でした。
取次、書店からの注文も多く、
なかには、
「めんしろなんごくりょうりにん」
「めんぱくなんごくりょうりにん」
など、
思いもしない読み方をされたり。
いまとなっては
なつかしい思い出。
このごろの例でいいますと、
『石巻片影』→「いしまきかたかげ」
『松本清張の葉脈』→「まつもとせいちょうのはみゃく」
が出色でしょうか。
漢字の読みは、
げに難しく、
注文を受け、
はてそんな本を出していたかしらと、
意表を突かれることもあります。

 

・罅割れて汗噴きだすや石の段  野衾

 

動物園

 

・骸かと摘まめば勁き蟬の羽

 

父と母は三十代ですかね。
わたしはたぶん小学生、
弟は幼稚園生か、
まだか。
動物園はそのころ千秋公園にありました。
砂利道を歩いて行った記憶があります。
昼を食べてからだったか、
動物たちを見てから
昼にしたか、
弟は中華とラーメン、
中島のテッチャもいたかもしれず、
父と母が、
わたしと弟を動物園に連れていってくれたことが、
おもしろいと思います。
いま尋ねたら、
なんて答えるでしょう。
もう昔のことで分からない、
それとも、
あたりまえのことを訊くな、
か、
わたしと弟を
動物園に連れていってくれたことが、
不思議におもしろいと思います。

 

・雲の峰村を出てから五十年  野衾

 

森鷗外訳『即興詩人』

 

・遮断機の先やゆらりと夏の海

 

朝、
コーヒーを淹れながら少しずつ読んでいるアンデルセンの
『即興詩人』
訳者は森鷗外。
文語文で書かれており、
すらすら読むことは叶いませんが、
こころを落ち着け
ゆっくりすすむと、
物語の世界が静かにひらけてくるようです。
口語文と比較し、
内容を理解するのに手間取るのに、
なぜあえて文語訳をえらぶかといえば、
ひとつにはリズム。
つい音読してしまいます。
無駄を省いた文語のリズムが心地よく、
からだ全体に響いてきます。
画家で絵本作家の安野光雅さんが一時
文語文に嵌ったことがあった
そうですが、
むべなるかな。
さて、これからコーヒーです。

 

・青々と息深くなる雲の峰  野衾

 

早起き

 

・夏の朝戯れ来たる雀かな

 

体調が旧に復しつつありまして、
それに連動し
起床も日に日に早くなり。
パソコンに向かいしばらくこうしていると、
この時間もふつうでなく、
いただくもので。
安息もごはんもいただきます。
きのうのビール、
美味かった。
青島ビール。

 

・納豆の糸ひく如し蟬の声  野衾

 

大雨時行

 

・立ち漕ぎの自転車揺れる蟬しぐれ

 

今週七十二候では、
大雨時行。
たいう ときどき ふる。
その暦どおり、
きのうの午後から夜にかけ、
関東では大雨が降り。
きょうは八月二日。
お盆がだんだん近づいてきます。
お盆といえば、
『お盆の弟』
監督の大崎さんを見かけました。

 

・来ないねだれもそのうち来るさ雲の峰  野衾

 

蟬しぐれ

 

・夏深し空ぐるぐると鳶の声

 

種類はそんなに多くないと思いますが、
おそらく
数十匹の蟬の声が入り乱れ、
朝からとてもにぎやかです。
音のシャワーのようでもあり。
空を蔽うドームのようでもあり。
一匹の蟬はうるさくても、
数十匹、
数百匹となると、
不思議にうるさい気がしない。
こんな感じかな閑さは。
きのう、
ベランダに油蟬でしょうか、
ころんと死んでいました。
蟬の死骸はいかにも軽く、
これにいのちが宿っていたとはとうてい思えません。
そう考えると、
いのち丸ごと鳴いている
ようでもあります。

 

・鵠沼やミルク金時匙を嘗む  野衾