怒りについて

 

アメリカの精神医学者ハリー・スタック・サリヴァンさんは、
精神医学は対人関係論であると喝破しました。
紀元前後ローマのストア派の哲人セネカさんに「怒りについて」の文章があります。
じぶんじしんに怒ることもあるけれど、
多くの場合、
他人に対して怒りは生じます。
「どうしてそんなこと言うの?」「そんな言い方ってある!?」
「クソッ!!」
腹に据えかねる。
どうにもこれは厄介な問題で、
一筋縄ではいきません。
いろいろ思い悩んでいるうちに、じぶんがおかしくなってくることもあります。
吉井和哉さんの「みらいのうた」は好きな歌ですが、
その歌詞に
「怒りもあるならば素直に出せばいい」
とありまして、
なかなか実人生でそんなふうにはできないけど、
歌うしかない、思いの深さが感じられます。

 

結局、どこに行っても一緒なんやなあ。100%満足できる環境はないんです。
だから大事なのは、
「今いる場所で、どうしたら己が快適に過ごせるのか」
を中心に考えることやと思います。
他人さんを変えて快適にするのではなく、
「自分がどう動けば快適になるやろうか」
「ここで気持ちよく過ごせるようになるやろうか」
なんです。
ハッキリ言ってしまうと、
他人さんを変えることなんか無理。
100%不可能とは言いませんけど、ちょっとそっとの努力では、
人の考えやふるまいは変わりません。
あの手この手を使って、
何年も十何年も徹底的にめんどうを見る。
それくらいの覚悟やエネルギーが必要になるもんや
と思ったほうがええでしょう。
(中村恒子・奥田弘美[共著]『心に折り合いをつけて うまいことやる習慣』
すばる舎、2018年、p.51)

 

「思ったほうがええでしょう」
そうか。
そうだろうなあ。
中村恒子さんは1929年生まれの精神科医。
この本は奥田弘美さんの聞き書きによるものです。
奥田さんは、内科医だったそうですが、
中村恒子先生と出会ったことをきっかけに精神科医に転科したとのこと。

 

・コーヒーの香りや味や冬ざるる  野衾