トラウマを耕す

 

宮地尚子(みやじ なおこ)さんが書かれた本『トラウマ』(岩波新書、2013年)
を読もうと思って買って、まだ読んでいませんが、
ぱらぱらめくっていましたら、
第6章の見出しが「トラウマを耕す」
となっており、
目が留まり、中扉の裏に記されたことばを、そこだけ読んでみました。
幾度かくり返し読んでいるうちに、
書かれたことばが発せられる声まで想像できる気がし、
これは、
のっぴきならない事象を、思い、反芻し、ご自身のこころにも浸み込ませるようにして、
やわらかく、わかりやすく記した実のあることば
と思えてきました。

 

この章では、「トラウマを耕す」ということを考えてみます。
トラウマを社会から消し去ることはできないし、
いったん被ったトラウマを個々人が忘れ去ることもできません。
トラウマを抱えることは苦しいことですが、
それでも人は生きていきます。
他者とのつながりを少しずつ取り戻し、自分の居場所を一時的にでも見つけ、
生きていく意味をかすかに感じながら日々を紡ぎ続けること
はできます。
そこから出てくる知恵や想像力、創造性もあります。
だから、
むしろトラウマの存在をきちんと認め、
生き延びてきた人たちから学び、
トラウマによって生みだされる文化を尊重し、味わうという方向性
を考えてみたいと思うのです。
(宮地尚子『トラウマ』岩波新書、2013年、p.222)

 

・ことばに傷つき癒され秋の風  野衾