祈るこころ

 

また、祈るときは、偽善者のようであってはならない。彼らは、人に見てもらおうと、
会堂や大通りの角に立って祈ることを好む。
よく言っておく。
彼らはその報いをすでに受けている。
あなたが祈るときは、奥の部屋に入って戸を閉め、
隠れた所におられるあなたの父に祈りなさい。
(「新約聖書 マタイによる福音書第6章5-6節」聖書協会共同訳『聖書』、2018年)

 

この箇所を読むたびに連想するいくつかのことがありまして、
そのひとつが長谷川町子の『いじわるばあさん』
主人公である伊知割石(いじわるイシ)は、およそ祈りとは程遠いように見えて、
なかなかそうでないかもしれない。
イシさん本人に訊けば、
そんなことがあるもんか、なんて言われかねないけど。
もう一つは、池波正太郎の『鬼平犯科帳』。
いっぱいおもしろい話があるなかで、
街道で安くておいしい団子屋だったか茶店だったか忘れましたが、
ひとの噂にのぼる店があり、
そこに主人公の長谷川平蔵が犯罪の臭いを嗅ぎつける。
ニンゲンは、百パーセント悪いことはなかなか出来ないものだ、
どこかでバランスを取りたがる、
そんな人間観察、洞察を、
たしか漏らす場面があったと記憶しています。

 

・寒卵利かぬ指もて割りにけり  野衾