コメディアンの覚悟

 

おととい土曜日、テレビを点けたら、
キングオブコント2021をやっており、見ていたら面白かったので、
きわめてわたくしごとながら、
ふだんのルールを破り、
就寝時刻を一時間も延長して最後まで、
見ました。
見てしまった、でなく。
優勝は空気階段。
決勝に進出した顔ぶれを見ると、すでに知っているチームもありましたが、
初めて見るチームも数組あり。
三時間ほど見ていて感じたのは、
時代は確実に変化しているということ。
また、
コロナのことは、
ネタの中には一切出てきませんでしたけれど、
これは想像ですが、
こんな時代において、なぜいまじぶんたちはお笑いをやっているのか、
やり続けていこうとしているのか、
お笑いってそもそも何なのか、
そういう問いを含みつつのコントが多かった気がします。
睡眠時間を一時間減らしても見る価値は十分。
というわけで、
元気に眠りに就くことができました。

 

寅さんで成功してからの渥美清と、雨の降る肌寒い日、ばったり地下鉄で会ったことを
今回、加筆してあります。
「これから松竹へ行くんだ」って言うから、
ぼくが
「松竹もタクシーくらい用意したってバチは当たらないだろうに」と応じたら、
うまい喩えををしました。
「おれみたいな役をやってるのは、車に乗ってちゃダメなんだ。
こうやってパチンコの玉みたいにのべつ《「のべつ」に傍点》くるくる動いてないと、
錆びついちゃうんだよ」。
びしりと、そう言いました。
彼だって、それまではタクシーに乗ってたんですよ。
寅さんの役のために、
意識して地下鉄に乗るようになったわけです。
こういうことも〈喜劇人としての覚悟〉ですよね。
(小林信彦[著]『決定版 日本の喜劇人』新潮社、2021年、p.551)

 

・寂しさも華やぎて在り土瓶蒸し  野衾