秋田の幼なじみのSさんが、きゃばの葉でくるんだ赤飯を送ってくれました。
五十年ぶり、いやもっとか。
会社に届いたものを、タクシーで持ってかえり、
家人が帰宅するのを待たずに、
包みをほどいてみた。
赤飯をくるんだきゃばの葉が、ちゃんと藁で十文字に縛ってあるではないか!
そうだそうだ。なつかしい。
きゃばの葉は抗菌作用、殺菌作用があるとはいえ、
せっかくSさんが送ってくれたのに、
もしも傷んでいたら、もったいないと思って、一分一秒でも早く口にしたかった。
で、
で、
んめがったー!! こでらいねー(こたえられない)!!
感動しきり。な、なだ(涙)でできた!!
(注――「なだ」の「な」と「だ」のあいだに小さい「ん」が入る)
きゃばの葉の香りの青さ、みずみずしさ、すがすがしさ、もったいなさ。
さっそくSさんに電話。
そこで、改めて、
「んめがったー!! こでらいねー!! なだでできた!!」
と告げるや、
Sさん、
「あはは…。んめ、どごさいるじや? あははは…」
全国区のことばに置き換えると、
「あなたどこにいるの?」。
わたしが、もろに秋田弁でしゃべったので、Sさん、
思わず噴き出してしまった。
わざわざ山にきゃばの葉を採りに行き、
赤飯を炊いて、温かいうちにきゃばの葉にくるんで郵便局に持っていったのだとか。
局員から「クールにしますか?」
と訊かれ、
そうしたほうがいいか、とも一瞬思ったけれど、
きゃばの葉は抗菌作用があるし、
常温のまま食したほうがぜったいに美味しいと思い直し、
常温のまま送ってくれたのでした。
電話でその話を聞き、
やっぱりそうかと合点がいった。
会社に届いたとき、
おそらくそうだろうと想像できたので、
それもあって急ぎタクシーで帰り食したのでした。
かつて共同作業で田植えをしていた頃は、
昼の休みに家に帰る時間がもったいないので、
係りの者が、
家からきゃばの葉でくるんだ赤飯を田んぼの畦道まで運び、
そこで地面に座り皆で食べたものでした。
子どもだったわたしもおすそ分けに与りました。
その後、田植え機械が普及したことで、
共同の田植えがなくなり、
同時に、きゃばの葉でくるんだ赤飯を食することもなくなった。
ちなみに、
きゃばの葉は、朴葉のこと。
だから、ひょっとしたら、
「きゃば」の「ば」は葉を指しているのかもしれない。
そうすると「きゃば」の「きゃ」は何?
その辺り、
まだ調べが付いていません。
・きゃばの葉の赤飯皆で植田かな 野衾