体力勝負

 

おおざっぱな言い方をしますと、何ごとにつけ、
だいたいポジティブ・シンキングを心がけるようにしています。
そう考えることで、
日々を少しでも明るく過ごせればと願う今日このごろ。
ネガティブよりもポジティブ。
加齢によるいろいろも、
赤瀬川原平さんの「老人力」に習い、悲観的にならぬよう極力気をつけています。
が、
きのうのことです。
日々のささやかなこころがけではカバーできない出来事が起こりました。
「お先に失礼します」
社にいる皆さんに挨拶をし、荷物をもって退室。
と、ん!?
なんだかとっても身が軽い。
ん!?
あっ!!!
リュ、リュック忘れた!!
じぶんで驚いた。身が軽いはず。小さなトートバッグと本を入れた布の袋は持ったのに、
肝心のリュックサックを忘れているではないか。
じとーっ。
脇の下に変な汗。
回れ右して、何も言わずに、退室したばかりの社に戻り、
静かに堂々と歩を進め。
机の横に置いてあるリュックをおもむろに手に取り、
ゆっくり背中に背負い、そろ~り、
ふたたびの退室。
だれも何も言わない。無言で机に向かっている。
ほ。
よかった。たすかった! 気づかれてない!
胸をなでおろす。
それから、
何ごともなかったかのように家にたどり着いた。
以上、
一連のことを家人に報告したところ、
いわく、
「きっと、みなさん気づいていたと思うよ。あら!? シャチョー、どうしたんだろう?
そう思っていたわよ」。
そうか。
そうだったのか!
でも。
と、ここでポジティブ・シンキング。
土、日も出勤し、ただいま鋭意集中して読んでいるゲラがあり、
つづきをきのうも読んでいた。
一ページが約五分として十ページで五十分。
気になることを調べ始めると、
十分、二十分はすぐに経つ。
休憩をはさんで三時間もつづけると、ヘロヘロに。
ことばを追いかけ読むのに、
アタマはもとより、こんなに体力を使うのかと改めて思い知らされます。
そうか。
集中して仕事をしたせいか。
そのせいでリュックを忘れたのか。そう思うことにしよう。
そうだそうだ。
でもな。
すこし無理がある。

 

・新緑や開けて黙示の音を聴く  野衾