早朝、ゴミの袋をもって外に出たときのこと。薄暗い目の前の道を何かが通り過ぎた。
うす暗いなか、さらに黒い塊のようなものが、たったったったったっ、
と。
猫? ちがうな。犬か。いやちがう。子狸。まさか。
ゴミ収集ネットをセットし、
なかへゴミの袋を入れたものの、
やはり気になって仕方がない。
黒い塊が向かった方角へサンダル履きで走った。
人間の走るスピードよりは速くないと目視していたのに、
どこにもそれらしい姿は見つからなかった。
猫でも犬でも子狸でも、
はたまたそれ以外の動物でも、
いったん見遣ったにも拘らず走って追いかけたのは、
その動きと動きかたに、
ちょっと切なるものがあり、
なんとなくザワザワした印象がこちらに伝わったからだ。
何だったかよりも、
あのときあの塊がどういう心情だったのか、
それが知りたい。
・ふるさとは連山今ぞ冬紅葉 野衾