谷崎の文に酔う

 

『中央公論』の名編集長と謳われた滝田樗陰(たきた ちょいん)との関連から、
谷崎の作品を読み返していましたら、
つい声にだしたくなり、
じっさい静かに、ゆっくり、朗読すると、
えも言われぬ心地よさにとらわれ、
なるほど、
酔うのは酒ばかりではないと改めて思わされます。
滝田樗陰は、
もらった原稿に感動すると、
書いた本人のまえで読み上げる癖があり、
夏目漱石などはそれをあまり良しとしなかったようですが、
読み上げたくなる文章というのは確かにあります。
ちなみにきのうわたしが声にだして読んだのは『蘆刈』。
奥深い森から潺湲とながれ出づる小川にも似、
訪れたことのない土地の空気感までが想像され、
文章を読むことの根源的な感動と悦楽に浸ることができました。
文体をふくめ、
幽玄、夢幻の能の世界にも通じているようです。

さて、来週6日(日)から8日(火)まで秋田に帰省します。
なのでその間「よもやま日記」は休みとなります。
よろしくお願いします。

 

・秋の暮けふの仕舞ひの湯に浸かる  野衾