赧の字の怪

 

白川静の『漢字の体系』は、白川さんのいわば遺言のような本なので、
ゆっくり味わうように読んでいるわけですが、
ときどきハッとするようなことが書かれていて目をみはります。

 

ゼン(「赧」の字の旁、右側、入力しても出てきません)
陰部に手(又[ゆう]は手の形)をさし入れる形。
赧[タン]はその行為を受けて赧[は]じ入る形。
このような字が生まれるのは、
そのような行為が一般的に行なわれていたからであろう。
(白川静『漢字の体系』平凡社、2020年、p.275)

 

ということですが、
中国人もこれを知ったら驚くんじゃないでしょうか。
驚くだけでなく、受け入れないかもな。
許慎の説文解字には、そんなこといっさい書かれてないし。
あやしい人が言うならともかく、
白川さんが言うんだから、
それなりの根拠があるんでしょう。
いやはや。
こんなことまで漢字にしてしまうのか。
恐るべき漢字の世界。

 

・鶯の声や枝葉の揺れてをり  野衾