秋の日の…

 

仕事帰り社を出ると、こころなしか、ひんやりしている気がしました。
秋の日は釣瓶落としのことばどおり、
暮れるのも早くなりました。

 

秋 の 日 の
ヸ オ ロ ン の
た め い き の
身 に し み て
ひ た ぶ る に
う ら 悲 し。

……………

 

ポール・ヴェルレーヌの詩「落葉」の第一連。
ひたぶるにうら悲し。
ひたぶるに、
か。
上田敏の訳詩集『海潮音』に入っているものですが、
若いころは
こんなの見てもなんとも思わなかった
のに、
まったく、
季節の移り変わりとおんなじように、
いつの間にか、
「秋の日のヴィオロンの…」
とアタマをかすめ、
えーと、だれだっけ、
となるじぶんに驚いているじぶんがいます。
いまなら
もっとほかの訳もあるようですが、
すこし古風な上田敏の訳が秋のもの悲しさには合うようです。

 

・曉(あかとき)の光り跳ね入る鯔日和  野衾