しにゃぐにゃ

 

八十七歳になった父は
年齢にふさわしく入れ歯を装着しています
が、
好物は変わらずで、
イカタコが食卓に上がれば、
つい箸がのびるようです。
イカやタコばかりではありませんが、
とくにイカやタコを
口に入れて噛んだとき、
くにゃくにゃして噛み切れず
噛んでも噛んでもなかなか嚥下できないことを称し、
秋田では「しにゃ」といいます。
しらべてはいませんが、
おそらく、
「弾力があって、しなやかにたわむ。しなる」(広辞苑)
の意の「撓う(しなう)」
から来ているのではないか
と思われます。
ところで今回、
弟が案内してくれたスーパーマーケットで購入した酢蛸は、
酢の具合もほどよく、
また二、三回噛んだだけでスッと噛み切れる
クオリティの高い蛸
でありました。
父もおいしそうに食べていました。
弾力があってしなやかにたわむことが「しにゃ」
「ぐ」は接続助詞の「~では」
かな?
「にゃ」は否定の意の「ない」
したがいまして
今回の酢蛸は「しにゃぐにゃ」
弾力がありすぎて噛み切れないものではない
という意味になります。
と、
さてきょうは仕事始め。
適度に弾力を保ち、
必要に応じて潔い謙虚さを忘れぬ仕事をしたいと思います。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 

・壺を出て初市に蛸来りけり  野衾