ネット売り上げ

 

・宣長のこころもゆかし桜かな

春風社のインターネット上の売り上げが、
前年比三十数パーセント増であることが分かりました。
つくっている本の多くが学術書である
ことを考えれば、
うなずける数字です。
振り返ってみればわたし自身、
街の本屋に立ち寄るのは、
隔週で通う鍼灸院の行き帰りのみとなりました。
必要な本、読みたい本はほとんどネット書店で購入します。
いつの頃からか、
どこの本屋に行っても臭みがなくなり、
ツルンとして面白くない。
個性もなければ毒もない。
問題のひとつは返品制度です。
売れなければ返せばいい…。
売れなければ返せばいい
と思って仕入れる商品の棚が
魅力的なはずがない、
というのは極論ですが、
著名な書き手の名前を書店員が読めなかったり、
簡単な漢字の書名を読めなかったりするのも、
もとを正せば、
問屋から送られてくるものをきれいに並べておき、
売れなければ返せばいい式が
現在の状況を生んでいる
といっても過言ではないでしょう。
どの本屋も、
売れなくても返せない
となったら、
おのずと仕入れに気合が入り、
必死に売ろうとするのではないでしょうか。
そのために、
商品知識を得ようと
出版社に問い合わせをして来る
ようになったら面白いし、
街場の本屋が変る気がします。

・遠方より春風駘蕩友ふたり  野衾