残業感

 

・鶯や少年負けじとイッテキマース

仕事帰り、
保土ヶ谷駅の改札を出、
通路の端に寄りスマホから家人に電話するも、
留守録に切り替わったので、
仕方なく歩き始めようとしたその刹那、
濁流のように移動してゆくひとの群れの中に
家人発見!
流れに逆らって泳ぐように
つつーいと近寄り、
肩先をつんつん
「おいおい」
振り返った家人
「あらま、どうしたの?」
「電話しても出なかったから」
と、わたし。
「残業だったの。疲れたわ」
と、家人。
「ふ~ん」
「そうなの」
「ふ~ん」
「なによ?」
「ざんぎょう…」
「だから、なによ?」
「いや。残業と残尿、似ているなあと思って…」
群れのなかの三、四人は
振り返ってわたしを見ました。
家人、
プイッと前に向き直り、
何事もなかったかのごとく
ひたすら、
まっすぐに歩いていきます。
あわてて追いかけ、
「どうしたの?」と話しかけるも、
家人「他人他人」
と言いながら、
残業疲れを忘れたように
たくましく歩いていきました。
おしまい。

・春雨や濡れて参るにゃ強すぎる  野衾