見えてきたこと

 

・沈丁花白き花弁の厚さかな

出版界の大手取次である栗田出版販売の倒産につづき、
太洋社が自己破産の申請を出したとのニュース。
業界全体の売り上げが、
ピーク時と比し四割減ということですから、
やむを得ないのかもしれません。
日本の出版界のネックは
本の再販売価格維持制度に在りとは、
昔から言われてきたことですが、
それがここにきて
なし崩し的に融けはじめていると思わずにいられません。
「本は他の商品とちがって文化的価値を有する」
という言説を、
わたしは眉唾物だと思って
これまで聴いてきました。
それは、
本にかかわるひとの最大の驕りだと今も思います。
本の価値を言うならば、
再販制など声高に叫ばなくても、
古本市場は
インターネットのおかげで、
かつてないほどの活況を呈しています。
本に文化的価値ありとすれば、
古本にこそそれはあると信じます。
古本になったとき、
どれだけの価値が下支えされているか、
それこそが問われる。
また、
「本はこれから電子書籍の時代へと突入する」
的な言説も
いつの間にかどこへやら。
このごろは、
「電子書籍で生き残るには」
をテーマにした講演会が開かれたりもし、
世の浮沈はめまぐるしく。
まさに風次第なる浮世哉といったところですから、
向かう方向を間違えないようにしたい。
あ。
以上の文脈で下の写真を見ると、
倒産した会社の倉庫と思われる方があるやもしれませんが、
そうではありません。
昨日、
ただいま進行中の写真集の印刷立ち会いのため
武蔵浦和にある印刷工場に行ってまいりました。
その時の写真です。

・沈丁花妖しく薫る君なりき  野衾