・三月を露ひとつぶの重さかな

つかこうへいの『熱海殺人事件』だったでしょうか、
「弁護士に頼るような犯人はきらいだあ!」
みたいな台詞があったのは。
その伝でいくと、
注に頼るような学術書は嫌いだあ!
みたいなことになりかねません(ちがうか)が、
これは、
学術書が学術書であるかぎり、
そういうわけにもいきませんで、
先行研究を正確におさえ、
シャープで無駄のない面白い注は、
むしろ、
本文を支える縁の下の力持ちになります。
小西甚一さんや
ドナルド・キーンさんの注は、
注にも気が通い、
文章もテンポがよく、
読んでいて実に気持ちがいい。
ほんの一行挟まれた小ネタも楽しく。
「一回り二回り外の読者」
へ本を届けるには、
こういう注への目配り気配りも大事ですから、
日々の仕事の参考にしようと思います。

・夜桜や蒼にピンクの色を添ふ  野衾