少女は自転車にのって

 

・映画観にリュック背負ってさくららら

原題はWadjda(ワジダ)
2012年のサウジアラビア=ドイツ合作映画。
物語は一見、いたってシンプル。
十歳のおてんばな少女ワジダは自転車が欲しい。
自転車にのって
男の子の友だちアブドゥラと
競争がしたい。
映画の冒頭、
自分の自転車を持ち、
自転車にのってワジダをからかうアブドゥラがいう。
「男に勝てるわけがないだろう!」
ワジダが叫ぶ。
「私も自転車を買うわ!」
少女ワジダがいろいろ知恵をめぐらし
小金を貯めていく過程で、
学校、家族、結婚、男社会等々、
サウジアラビアの内情が、
外国人であるわたしたちにも少しずつ見えてくる。
小金を貯めても、
自転車を買うほどにはなかなか至らない。
と、
あるとき、
ワジダが通う学校で、
コーランの暗唱大会が開かれることになり、
優勝賞金はいつもより200リアル高い1000リアル。
そのおカネがあれば、
自転車が買える!
ああ、もう、
その物語の進行がわかっただけで、
目がうるうるしてくる。
二十一世紀になっても、
サウジの国はこうなのか、
昔の話じゃないの?
と思われることが多々あり、
不勉強をなじられても仕方ないのですが、
その意味でも勉強になりました。
コーランの暗唱大会でワジダは優勝します。
が、
校長から賞金の使い道を尋ねられ、
自転車を買うとワジダは正直に答えます。
女の子が自転車を乗り回すなんてとんでもないと
校長に反対され、
賞金を手にできなくなってしまう。
落ち込み
とぼとぼ家路につくワジダに向かい、
「いつか結婚しよう!」とアブドゥラ。
「………」
無言のワジダの表情にハッとさせられます。
オーディションで選ばれたワジダ役のワアド・ムハンマド、
アブドゥラ役のアブドゥルラフマン・アル=ゴハニ
ふたりの表情は、
深く悲しく優しく澄んで、
ことばにならないだろう気持ちが
見ているこちらまで伝わってくるようなのだ。
監督は、
サウジアラビア初の女性監督ハイファ・アル=マンスール。
これが彼女のデビュー作とか。
いい映画でした。

・館出でて暖簾くぐりし蕎麦屋かな  野衾