テレサ・テン

 

・乾燥果季節の香りを封じ込む

おとといテレサ・テンが特集されていたと思ったら、
きのうもテレビでテレサ・テン。
本人が歌う姿も放映されましたが、
当代の歌姫、
伍代夏子、坂本冬美、藤あや子が
テレサさんの「空港」を順番に。
三人とも
それぞれの個性で歌っているとはいうものの、
耳の慣れとはべつに、
テレサ・テンの歌唱のすばらしさを
再確認しました。
坂本冬美は声が硬すぎ、
藤あや子の語尾のあやは取ってつけたようであやしく、
かろうじて
伍代夏子がまなじりの語りで
補っていましたけれど、
テレサ・テンのあの
肌触りのいい、
こころまで潤ってくるような
天性の声と歌唱に
敵うべくもありません。
比較するのは野暮というものでしょう。
おとといの番組では、
作曲家の三木たかしの
生前の姿も放映されていました。
三木さんが「愛人」の曲をつくったとき、
「時がふたりを 離さぬように」
のところは、
作り手の気持ちとしては、
高揚していく気分をさらに盛り上げたくなる。
が、
そこは敢て抑え、
低い音と控え目なメロディーにした。
それを天才テレサ・テンが
歌い上げることなく、
彼女ならではの表現をもって歌いきる。
天才とよばれる所以である云々。
おとといの番組に登場した
作詞家の荒木とよひささんは、
「天才三木たかし」とよんでいましたけれど、
三木さんも、
テレサさんと出会い、
さらに作曲家としての才能を
開花させていったのかもしれません。

・美しき花を鏡に映しけり  野衾