ノスタルジー

 

・白につぐ紅の梅あり竹の宿

清野とおるの漫画『東京都北区赤羽』に、
「ノスタルジーも度が過ぎると凶器になる」
という言葉がありまして、
そうだなぁと合点がいき、
ふと上を見上げ、
来し方を思い出したりもしましたから、
清野さんにお目にかかったとき、
そのことを申し上げました。

清野さん、
「そうですか。いゃ、どうもどうも…」
みたいなことでした。
また、
十文字学園女子大学でトークをしたとき、
特別講師として
清野さんをお招きしたことがあり、
ノスタルジーも~
の話をその時もまたしまして、
そうしたら清野さんに、
「その話、好きですねー」と言われました。
はい。
好きです。
そのとおりと納得します。
さて昨日のこと。
テレビを点けたら、
テレサ・テンの特集をやっていました。
彼女と親交のあった二人に
武田鉄矢が聞き役になって番組が進行していきます。
「空港」「つぐない」「愛人」
テレサさんの
なんとも哀切極まりない声を聴いているうちに、
はじまりはただふんふんふん
頬杖ついて
無防備に懐かしがっていただけですが、
やがて度を越し、
だんだんと
凶器が鎌首をもたげてくるようなのです。
魔ズッ!
たら、
即テレビを消して亀蒲団。

・雫垂る闇の宿りの背の春  野衾