ありのまま

 

・やばちくて一雨ごとのぬぐさかな

神田神保町にある東京堂書店で催された
四方田犬彦(よもた・いぬひこ)×田代一倫(たしろ・かずとも)
トークショーへ。
開始まで時間がありましたので、
入り口に置かれていた田代さんの写真集をパラパラと。
『はまゆりの頃に 三陸、福島2011~2013年』
と題されたぶ厚い写真集は
全488ページ、
掲載写真453点、
撮影人数延べ1200人とのこと。
量は大したものですが、
全体を通して凡庸な
“シロウトが撮った写真の束”
としかわたしには見えませんでした。
被写体と向き合ううちに、
言葉を失い
口ごもり、
沈黙を強いられたことがあっただろうか。
むしろ饒舌な写真集であると。
田代さんはトークの中で、
一期一会という言葉を何度か口にされましたが、
あの写真集が一期一会といえるか、
疑問です。
「カメラは
ありのままを写しても
ありのままは写らない
ありのままの中から創るのだ
創らなければありのままは写らない
ありのままは、
カメラが生きて、
ありのままにならなければならない」
一昨年亡くなられた映画監督の
新藤兼人さんが生前、
写真集『九十九里浜』に寄せてくださった
詩にある言葉です。

・車中暖房汗掻き掻き読書かな  野衾