十四分

 

 春風や駘蕩として思はざり

保土ヶ谷駅-横浜駅間は、
JR横須賀線の電車に乗ること四分。
横浜駅-桜木町駅間は、
JR京浜東北線の電車に乗ること三分。
なので、朝七分。
帰宅時七分。
計十四分。
土日祭日を除いて毎日ですから、
ちりが積もれば山の例もあり、
けっこう本が読めます。
岩波文庫で数冊出ているボルヘスの本や、
いつも途中で投げ出していた
中野好夫訳『ガリバー旅行記』(新潮文庫)を、
一日十四分の車中読書で読了しました。
いまは、
ポール・ヴァレリー作『ムッシュー・テスト』(清水徹訳)
を読んでいます。これも岩波文庫。
薄い本なので、
そんなに時間がかからないでしょう。
これが終ったら、
ヴォルテール作『カンディード』を読もうと思っています。
いま読んでいる本が巻の中ほどまで来て、
つぎに何を読もうかなと
思念しているときが
いちばんおいしい時間かもしれません。

 将棋さし面会謝絶の蘆花の春  野衾