カピタン

 

 大口でちりめんじゃこを頬張りぬ

DVDで黒澤明監督の『デルス・ウザーラ』を見ました。
作者のアルセーニエフは探検家として、
ソ連政府の依頼に基づき、
地図作成をもくろみ隊長となって空白地帯の旅をします。
先住民ゴリド族の猟師デルス・ウザーラは、
探検隊一行と山中で出会い、
隊長から案内役を依頼されるのですが、
デルス役のマクシム・ムンズクがいい味出しています。
ところで、
この映画を初めて見ながら、
不意に思い出したことがありました。
それは、
カメラマンの橋本照嵩さんのことです。
ずいぶん前になりますが、
十数年前でしょうか、
酔いの回った橋本さんがさかんに、
「カピタン。カピタン」と何度も連呼します。
なにがそんなに面白くてカピタンカピタン言うのだろうと
訝しく思いながらも、
それはそれとして放っておき
楽しく飲んだのですが、
きのう、はっきりと分かりました。
先住民ゴリド族のデルスが
隊長のアルセーニエフを呼ぶとき、
カピタン(隊長)カピタンと呼ぶのです。
その声色がとても独特で、
だんだんと
なんともいえない親密さを増していきます。
声に表れたその色が
橋本さんはきっと好きだったのでしょう。
またどうしたわけか、
デルス役のマクシム・ムンズクを見ているうちに、
それが橋本さんに見えてきて仕方ありませんでした。

 春なればふっくらアナゴ散らし寿司  野衾