神奈フィル

 

 さむさむと楽団員も饂飩かな

神奈川県立音楽堂で行われたファン感謝コンサート、
神奈川フィルハーモニー管弦楽団
「明日への前奏曲」(夜の部)
を聴いてきました。
昼、社内で仕事の打ち合わせを終え、
いつもより遅く太宗庵へ行ったところ、
お客さんが帰った後らしく、
ほかに誰もいませんでしたが、
程なくぞろぞろと入ってきた集団がありました。
もみ手したり、
防寒具の襟をかき合わせたり。
「ホールは寒い!」
「ここの味噌けんちんうどんは絶品! 大盛りでお願いします」
「ぼくも味噌けんちんうどん」
「ぼくはせいろにします」
「○○さんは、マスクを二重にして気をつけていたのに、
インフルエンザに罹ってしまってさ」
「△△音楽大学は凄いよ」
等々の話が聞こえてきましたから、
神奈川フィルハーモニーの面々なのでしょう。
明るいふつうの気さくな皆さんでした。
さて、夜の部は七時から。
神奈フィル応援団長の黒岩県知事が
神奈フィルは今存亡の危機にある、ぜひ支援をとあいさつ、
さらに副応援団長の林横浜市長のあいさつ、
そして、
ローザンヌ国際バレエコンクールで優勝した〝時の人〝、
菅井円加さん登壇。
黒岩知事が神奈フィルとの共演をもちかけると、
「ぜひ」と菅井さん。
休憩を挟んで第二部では、
クラシック曲のイントロ当てクイズがあったり、
オークションがあったりで、
あっという間の二時間半。
神奈フィルを指揮する権利を
六万円で競り落とした岡さんという方、
和服姿で指揮棒を振り堂々たるもの、
凄い人がいるものです。
かっこよかったなぁ。
チェロ奏者の演奏をすぐ目の前で聴ける権利を
お母さんから三千円で競り落としてもらった小学二年生、
かわいかった。
バッハの「無伴奏チェロ組曲」を壇上で聴き終えた小学生、
司会者に感想を求められ、
ひとこと「よかった」
そうか。
ほんとうによかった。

 遠く見てワカメのごとき指揮者なり

予定変更

 

 明日もある得した気分の閏年

休日、床屋で散髪してもらい、
朝、風呂でていねいに髭を剃り、
箪笥の中からおもむろに
勝負スーツを取り出し腕を差して鏡に向かう。
よし。
靴箱から磨いておいた革靴を。
よし。
東向きの窓に鍵を掛けた。
よし。
エアコン切った。
よし。
ガスの栓締めた。
よし。
いざ、出陣。
玄関のドアを閉め、回れー右っ!
心なしか、いつもより歩幅が大きいか。
気合い充分。
乗る電車の発車時刻の二十分も前に保土ヶ谷駅着。
気合い充分すぎ。
と、
ケータイ電話に着信音。
イシバシからだ。
聞けば、向こう様がインフルエンザで倒れ、
面談延期の知らせであった。
しばし呆然。
何事もなかったかのように、
予定した電車に乗り、
サン=テグジュペリの『人間の土地』
(堀口大學訳)を読み始める。
横浜駅で下車。
予定を変更し、
いつものように京浜東北線下り電車に乗り換えた。

 鎌倉の梅を知らせる駅ポスター

シーガーディアンⅡ

 

 急がねど蘆花と鏡花の春日かな

愛西市からやって来た義弟と中華街で食事をし、
その足で、
ホテル ニューグランドのシーガーディアンⅡへ。
『横浜の時を旅する』に
印象深いエピソードが取り上げられている
チーフバーテンダーの太田圭介さんがいらっしゃいました。
義弟とわたしはマルガリータ、
家人はマティーニ・ニューグランド、
すばらしい再会を演出してくれたカクテルの物語が
本で紹介されています。
『横浜の時を旅する』がきっかけで、
著者の山崎さんにぜひ伝えたい出会いがあったそうです。

 ハタハタのぬめり懐かし二人鍋

野衾

 

 野衾の怪の羽音す宵宮かな

『鏡花全集』を嘗めるように読んでいたら、
巻二に「照葉狂言」が収録されており、
その三つ目が「野衾」の章。
野衾と書いて、のぶすま。
ふすまという字は、
「衾」のほかに「襖」がありますが、
建具としてのそれは「襖」のほうで、
「衾」は、
同衾という語からも想像できるように、
現在言うところの掛け布団を指すようです。
この言葉を知って以来、
のぶすま、のぶすまと、
連日連呼しています。
なんだか、とってもおもしろい!
鏡花はその章をどんな風に書き起こしているのか、
その触りの部分、
「其翼廣げたる大きさは鳶に較ふべし。
野衾と云ふは蝙蝠の百歳を經たるなり。
年紀六十に餘れる隣の扇折の翁が少き時は、
夜毎に其の姿見たりし由、
近き年は一年に三たび、三月に一度など、
たまたまならでは人の眼に觸れずといふ。
一尾ならず、二ツ三ツばかりあり。普通の小さきものとは違ひて、
夏の宵、夕月夜、灯す時、黄昏には出来らず。
初夜すぎてのちともすれば其翼もて人の面を蔽ふことあり。
柔かに冷き風呂敷の如きもの口に蓋するよと見れば、
胸の血を吸はるゝとか。」
あはははは…
血ぃ吸うたろかぁてか。
宵闇に、ばさりふわりとやって来て人の面を蔽ふ野衾、
かっこいいではないか。
だから今日も、野衾野衾!

 野衾や華やぐ世々の裏表

人買いか

 

今夜は元アサヒグラフの編集者に、
「石川さゆり」を撮りたいと売り込んでの帰り、
千鳥足で新宿をぶらぶら。
背中にはいつも持ち歩く重さ五キロほどのカメラバッグ、
右手に写真材料の入った二枚重ねヨドバシカメラの紙袋。
ふっと背中に新宿の夜風が寒く、
昔「小便横丁」の鰻の肝焼き屋へ。
九時も廻っていて店仕舞い中。
「すまないねぇ」
「はいはい、どうもねぇ」
それではと、
向いの同じような角店の「天卵そば」380円に並ぶ。
椅子は八脚。
L字型のカウンターに向かう客も八人。
露地に背中を出して食っている。
待つあいだ私の上半身はゆらゆらとゆっくり揺れている。
「おとうさん、席ひとつ空きましたよ」
と、後ろの学生さん。
ついこのあいだまでは「お兄さん」
だったのに、
いやはや早いものです人生は。
不思議なのは、
客たちが皆
注文するときに千円札一枚をカウンターに置き
釣り銭をもらうこと。
私も小銭が足りないので千円札を。
千円でお釣りをもらう決まりの店かと、
夢の中にいるみたい。
近くの懐かしいガードをくぐり、
北口に出たところで声をかけられた。
「ちょっと、ちょっと、相談に乗りますよ、これ」
男が差し出した名刺を手に取ると、
横書きで 0120‐…と大きく印刷され
「○○○会」とある。
衣、食、住、お困りの方、相談に乗りますと。
手続きは簡単ですと男は言う。
「俺、カメラマン」
「えっ! 本当?」
名刺を返そうとしたら、
いや、あげますよ。
ふーん、人買いか、今の世の。

以上、
写真家・橋本照嵩さんからのメールを、
本人の了解を得て載せさせていただきました。

 瞽女唄や越後の風の荒らびたる

すごいことに!

 

 沈丁花待ちて鼻腔をひくつかせ

我がふるさと秋田の友人で、
ときどきここに写真を載せさせてもらっている
成美さんから、
アッと驚くような写真が送られてきました。
ご覧のとおりです。
添えられたメールに、
屋根から落ちきれず行き場をなくした雪が重なり、
掛け布団のような状態を呈している、
とありました。
もう捨てる場所がないのだとも。
先日父からの電話で、
「アダマサクルな。オギデすぐユギカギシテモ、
ママ食たあどで、まだヤラネバダメダもの」
と泣きが入っていたのもむべなるかな。
ちなみに、
アダマサクルは、
「頭裂くる」ではなく「頭さ来る」で、
「さ」は標準語の「に」にあたります。
なので、
「頭に来る」
わたしが子どもの頃もよく降りましたが、
こんなに降ったことはなかったと思います。

 九時に寝て四時に起きるは良い子なり

明日はツブヤ大学

 

 口漱ぐ音高くして水温む

NPO法人ツブヤ大学とヨコハマ経済新聞が提供する
BooK学科ヨコハマ講座「よこはま 本への旅」
の五回目が明日20時から春風社で行われます。
コチラコチラ
すでに告知されていますので、
ご覧になった方もおられるでしょう。
今回は、
『瞽女』『北上川』の写真家・橋本照嵩さん
をゲストにお迎えし、
写真集の読み方についてお話をうかがいます。
事前に橋本さんから、
木村伊兵衛や土門拳のお宝写真集も送っていただきました。
参加費1000円、ドリンク付き。
ご希望の方は、
ツブヤ大学にメールで申し込んでください。
あるいは、
春風社に電話で連絡してくださっても結構です。

 ホッカイロ今日は貼らずに過ごしたり