『斎藤喜博研究の現在』

 

 花と竜おいらの朝は花に水

不世出の天才教育者・斎藤喜博(さいとう・きはく)。
斎藤喜博が指導すれば、合唱する子どもたちの声がみるみる変り、
跳び箱は、全員跳べるようになった。
斎藤が校長をしていた群馬県島小学校
(現・群馬県伊勢崎市立境島小学校)には、
全国どこにでもある「フツーの」公立小学校だった。
にもかかわらず、
1952年から1962年までの11年間で、
全国から延べ1万人の参観者が訪れた。
斎藤校長を中心とする島小の先生たちの教育の営みは、
未来を創りだすものとして多くの人を惹きつけ、
当時島小を訪問したもののなかに、
後にノーベル文学賞を受賞する若き日の大江健三郎もいた。
大江は、
「ぼくはこの小さな小学校の奇蹟にみちた教室に、
二日間しかかよわなかったけれども、
そこにいる小学生たちの本当の新しさには、
ほとんど圧倒される思いだった」
(「未来につながる教室――群馬県島小学校」)
と絶賛を惜しまない。
斎藤の教育実践に惹かれ、学び、
つねに新しく未来をつくり出そうとする研究者たちが、
斎藤の教育を次代へ引き継ぐべく研究会を重ね論考を執筆した。
それが『斎藤喜博研究の現在』である。
千年単位の震災と原発事故による万年単位の人災により、
建設的な未来図を描けなくなっている現在、
未来への希望としての子どもに接し、
未来をひらくことをひたすら願い
日々教育実践を行った稀有の教育者・斎藤喜博の研究は、
今こそ必要必須であると確信する。
本は、今日出来てくる。

 その下で恋でもしたき花万朶  野衾