鎌倉散歩

 

 切り通し梅は未だかと歩きたり

JR横須賀線の電車を北鎌倉駅で降り
晴天の下、歩いて「北鎌倉古民家ミュージアム」へ。
雛飾りの展示を見ました。
古いものは、鎌倉時代のものも。
ゆっくり見て歩くうちに、
いくつかの人形のまえで立ち止まりました。
周りの空気がそこだけちがって、
時間の音が聞こえてくるようです。
窓から日の光が斜めに差し込んでいました。
次の目的地は、鏑木清方記念館。
切り通しを通って鶴岡八幡宮へ向かう道を家人が逸れたので、
「おいおい、そっちはちがうだろ」と言えば、
「方向が合っているから散歩がてら」と答えたので、
後ろからとぼとぼ随いていくと、
ひょいと目の前に記念館。
家人「ほらね」
鏑木清方の水色を堪能。
岩波書店の『鏡花全集』も展示されていましたが、
昭和四十年代に再刊されたもので、
初版では和紙にくるまれていた函がそうでなくなり、
本の背文字の箔押しが印刷に変わっていました。
手に取り触れてみると味わいがちがいます。
記念館を出て小町通りへ。
左右をキョロキョロしながら、古書・美術の木犀堂へ。
家人は『追想中川一政』を購入。
わたしは迷いつつも購入せず。
鎌倉駅へ向かううちに、
家人をその場に残して回れ右。
木犀堂へ取って返す。
「気になる本がございましたか?」
「はい」
鏑木清方の随筆集『こしかたの記』『續こしかたの記』、
それから昭和5年に出版された中川一政の
『美術の眺め』を購入。
店主の平井さんと本の話をひとしきり。
鞄に入っていた「春風目録新聞」を差し上げると、
「あ。佐々木幹郎さんですね」
「はい」と、しばし佐々木さんの話に。
途中で戻ってよかったと思いながら、
お代を払って、もと来た道へ。
家人、道の脇でたこ焼きを頬張っていました。

 雛人形昔の稚児の宴かな