本の先生

 

 雪かきを終へて半日昼寝かな

子どものころ、
わたしは外で遊んでばかりでしたから、
本をほとんど読んでいません。
周りで本好きな子がいたとも思われません。
いても気づかなかったのかな。
ともかく、
いわゆる児童文学なるものを読んできませんでしたから、
周囲の大人が数十年前を思い出し、
名作とされる児童文学について話し始めると
話についていけないし、
今さら読もうという気が起きません。
ところが、
ひかりちゃんとりなちゃんがいます。
幸いにも二人は大の本好きで、
今まさに読んでいる児童文学の本を薦めてくれます。
そのことがとてもありがたい。
ひかりちゃんから薦められて、
メアリーポピンズを読みました。
ふんふん、ふんふん、と何冊か読み終わった。
読んでいるときも面白かったけど、
時間がたつほどに、
いくつかのエピソードが忘れられずに、
覚えています。
その残り方が不思議な気がして、
名作というのはこういうこともあるのかなと思います。
今はりなちゃんから
『カッレくんの冒険』を借りています。

 捨て水が水飴のごと凍りけり

好きの電波

 

 小さき手が大学芋をもて来たり

たとえばオートバイ。
わたしは乗らないし、
免許も持っていないのですが、
オートバイ好きの人の話を聞くのはたぶん好きです。
「好き」にはウソがないと思うんですね。
ウソをつく必要がないというか。
だから、
なんでもいい、
何かが好きな人の話を聞くと、安心します。
先週金曜日(27日)はツブヤ大学
「Book学科ヨコハマ講座 よこはま 本への旅」の四限目で、
昨年末に惜しまれながら閉店した伊勢佐木書林の
店主・飯田明彦さんを春風社にお迎えし、
古書の魅力についていろいろお話をうかがいました。
お持ちくださった十冊ほどについて、
飯田さんからコメントをしていただきましたが、
そばで聞いていて、
ほんとうに本が好きなんだなと思いました。
どうしてそんなに好きなの? と訊けば、
それなりの理由をお話してくださるでしょうが、
たぶん、言葉の底には
言葉を支えるさらなる理由があるような気がします。
数年前、
二千冊ほどの本を飯田さんに買ってもらったとき、
そのなかに古川ロッパの日記があったのですが、
飯田さん、その本を手に取り、
「この本がまたウチの店で扱えるか」
ぽつりとおっしゃいました。
忘れられません。
ツブヤ大学の当日、
飯田さんの奥様からおみやげをいただきました。
ありがとうございました。

 朝寒し排水の音ゴボゴボと

ツブヤ大学「古書の魅力」

 

 縮かめて首と背中が凝りにけり

きょうは、
わたしがモデレータを務めるツブヤ大学の
「Book学科ヨコハマ講座 よこはま 本への旅」の四限目。
昨年末に惜しまれながら閉店した伊勢佐木書林の
店主・飯田明彦さんをゲストとしてお迎えし、
古書の魅力についていろいろお話をうかがい、
熱く語っていただこうと思っています。
今回から会場を春風社に移して行います。
近くにお住まいで(遠くても)
ご興味のある方は、
どちらさまもどうぞいらしてください。
お申し込みは、コチラまで。
なのですが、
きょうのことですから、
直接会場に来られて受付してくださっても結構です。
トークの模様は、
ユーストリームでも同時配信しますので、
はるか遠くにお住まいの方は、
ユーストリームでもご覧いただけます。
人から人へリレーされて読み継がれる本というのは、
いろいろと想像力をかきたててくれます。
どんな話が聞けるか、楽しみです。

 朝寒しコーヒー湯気に光かな

オッペシ、木こりになる!

 

 撒き水をよけて段段寒き朝

我が社創業メンバーの一人専務イシバシは、
ご存知の方もおられるでしょうが、
千葉県九十九里浜の出身。
あの辺りでは押すことを「オッペス」と言うそうで、
かつて、漁に出る船を半裸の女性たちが
全身弓なりにして押し出し=オッペシていました。
その姿は写真集『九十九里浜』にリアルにとらえられています。
「オッペス」も「オッペシ」も、
弾んで生き生きし、かわいく切なく、
猥雑な響きさえ感じられ、いい言葉だなと思います。
一度聞いたら忘れられません。
わたしはときどき、
イシバシを「オッペシ営業」と呼んでいます。
ズーッと押して押してまた押して、
さらに押し転瞬スッと力を抜く。何かが動き出す…。
オッペスことは、
力を抜くタイミングが大事かなと思います。
さてそのイシバシ、
このごろ海を離れ(笑)山へ行っています。
NPO法人森づくりフォーラムの活動の一つ、
フォレスト21さがみの森」のメンバーから
声をかけていただき、
山歩きをしているようですが、
先日は相模原市津久井町にある国有林に入り、
杉の木に登り下枝を払う作業に加わった、
正確には、
加えていただいたようです。
下の写真がその模様。
ひと目見て、吹き出してしまいました。
おっかなびっくり、いかにも慣れていなさそう。
杉の木に抱かれているふう。
でもまあ、初めて木に登ったそうですから、
仕方ありません。
ところで、
わたしの実家の秋田の杉林、どうなっているかな?
気になってきました。
相当太くなっているはずですが…。
このごろ見に行っていません。
真の文明は山を荒らさず川を荒らさず(田中正造)なのですから、
今度の震災と人災を踏まえ、
これからますます森の重要性が問われてくるはず。
木も森も、
政治や経済の時間とは尺度がちがいます。
本当は、政治も経済も百年二百年先を見越し、
木や森の時間を取り込むことが大事なのでしょう。

 息白し富士の高嶺に降る雪も

女の小便

 

 インフル一過積年の疲れ運び去り

中野好夫の『司馬江漢考』を読んでいたら、
女の小便のことについて記されていました。
司馬江漢というのは、
江戸時代の絵師、蘭学者です。
中野好夫はわたしの最も好きな書き手の一人で、
今までかなりの数の本を売りましたが、
中野さんの本だけはおそらく一冊も売っていません。
人にあげたものはあります。
ところで『司馬江漢考』ですが、
これは昭和六十一年といいますから、
一九八六年に出た本。
今から二十六年前になります。
中野さんの本ですから、すぐに買ったのですが、
つんどく時間が長く、ずっと読んでいませんでした。
思うところあって読み始めたら、
さすが中野さん、
やっぱり面白い。
この本は、
現在残っている書簡から、
司馬江漢の人物に迫ろうとした随筆・評伝ですが、
司馬江漢なるひと相当に変わっていたらしく、
それは書簡からも充分うかがい知れます。
女の小便の話は、
山領主馬宛書簡のなかに出てきます。
京(都)にあしき事として一項を設け、
「女の小便、是はタゴへする故に、尻をまくり後ろ向になる。
多くは尻をふかず、一向の田舎風なり」
そう記した後で、江戸の能き事として、
「女の小便するを不見」とありますから、
江戸ではそういう風習がなかったんですかね。
ちなみにわたしは子どものころ、
「尻をまくり後ろ向にタゴへ小便する女」
を見たことがあります。
そんな珍しいことではなかったと思いますよ。
昔は京都でもそうだったんですね。

 顔マスク眼鏡曇りて苛苛す

インフルエンザ

 

 インフルが治り畏友に電話する

先週木曜日の夜でした。
四十度ちかい熱が出て、ついにダウン。
正確に言うと、
ダウンしてから熱が次第に上がり
ついに四十度ちかくまで。
体がブルブルふるえ、
愛用のホッカイロを四枚も五枚も腰や背中や肩に貼り、
それから毛布と布団にくるまりましたが、
それでも、
間を置いてブルル、ブルル、ブルルと
排気量の大きいエンジンみたいに
抑えようもなく体がふるえます。
そうだ! 思い出した!
死んだおばあちゃんが教えてくれた。
こういうときは、慌てず騒がず、
体を幼虫のように丸めて布団にもぐり汗をかく。
三十分、四十分、一時間。
汗がだらだら全身から吹きだして来るのが分かります。
汗をタオルで拭き取り、
着替えをしてまた布団の中へもぐりこむ。
しばらくすると、
また汗が吹きだす。
よし、やった。
こうなればもう大丈夫! ふう。
起きて立ち上がりトイレまで歩きました。
便器に向かって用を足していたら急にフラフラッと。
立ち眩みがして、
気持ち悪くなりそのまましゃがみ込みました。
起き上がることができず、
パンツも上げることができず、
四つん這いで布団の部屋まで戻りました。
カッコわる!
熱が下がったのをいいことに、
急に起き上がったのが良くなかったようです。
というようなこともありましたが、
おかげさまで、
すっかり元気になりました。

 見るからに流行感冒強きかな

名探偵カッレくん

 

 息つめて汗を呼び出す布団中

風邪の熱がひいた土曜日、
近所のりなちゃんから借りていたリンドグレーンの
『名探偵カッレくん』を読みました。
子どものころ、
外で遊んでばかりいて、
本を読みませんでしたから、
本好きの子ならふつう読んでいるだろうと思われる本を、
わたしはほとんど読んでいません。
まえにひかりちゃんが貸してくれた
メアリー・ポピンズのシリーズなんかもそうでした。
でも、
幸か不幸かわたしの場合、
精神のあるところがあまり成長していないらしく、
五十を過ぎた今読んでもじゅうぶんに楽しめます。
源氏もいいけどカッレもね、みたいな。
てゆうか、
よく言われるように、
名作はいくつになっても読んで楽しい、
ということに尽きるのかもしれません。
ところで、カッレくん、
面白かったー!!
カッレくんが寝ている犯人の指紋を取ったり、
車のタイヤの模様を書き留めたりしたメモが、
どこでどんなふうに役立つのだろうと思いながら
読み進めていると、
ジグソーパズルのピースがカチリとはまるように、
ちゃ~んと物語の大事な場面で役に立つ。
うまいもんだなーと思います。
いちばん好きな場面は、
カッレくんが木の上にかくれて
犯人の様子をうかがっているところ。
大好きな友だちの女の子エーヴァ・ロッタがやってくる。
彼女がカッレくんを見つけ
声に出して呼びかけたら万事休す。
彼女はカッレくんを見つける。
カッレくんは目で合図し、
人差し指を伸ばし口にあてる。
彼女はカッレくんに声をかけなかった…。
う~ん。いいなー、ここ。
映画監督ならここをきちんと撮るだろうな。
山田洋次監督がリンドグレーンファン
だったとは知りませんでした。
ということで、
りなちゃん、
次のもお願いします。

 高熱を遣りて華やぐ冬景色