乱歩彷徨

 

 風邪抜けてぼーと昨日の忘れ物

乱歩といえば江戸川乱歩。
彷徨は、ほうこうと読みます。
このごろ書店から注文の多い本ですが、
読み方を知らずに注文してくる場合が少なくありません。
電話に出たものがその度に、
「ほうこうと読みます」と告げることに。
『面白南極料理人』を出したときの、
笑うしかない苦い経験がありますから、
驚きませんが、
調べないんですかね。
ちょっと調べてから注文してくればいいのにと思いますが、
今はだれも忙しいから、
「乱歩なんちゃら」でごまかすのでしょう。
作家の有栖川有栖さんが書いてくださった書評が、
日本経済新聞に掲載されました。
乱歩の愛読者はもちろん、
これから乱歩を読んでみようかと考えている人も
読んでみたくなる、
書評らしいありがたい書評。
コチラです。

 夜半にはトイレの神も眠りをり

タカアシガニ

 

 恋しきは鮟鱇鍋とホッカイロ

月曜日、とくに午前中は体調が優れません。
ブルーマンデーという言葉もあるぐらいですから、
洋の東西を問わず、
月曜日は憂鬱なのかも知れません。
以前は、
こんなことではいけないと自らを奮い立たせ、
むりやりテンションを上げたものですが、
それもかえって体に悪そうで止めてしまいました。
今はただジッとしているだけ。
ひたすらジッとしています。
そうしていると、
自分が人間でなくカニになっていくような気がします。
水族館にいるタカアシガニのようなものです。
話しかけられれば別ですが、
こちらから話しかけることは滅多にありません。
低く呪文のように、
タカアシガニタカアシガニタカアシガニ…
昼食をとり午後三時ぐらいになると、
体の芯が発動してきます。
タカアシガニがやっと動き始めます。

 交差点ヒートテックの冬となり

夜の床屋

 

 冬の星親しき人の住処とぞ

一日中ゲラや本を読んで疲れてきましたから、
財布とケータイを持って外へ出ました。
このごろ通っているダンサブルな床屋へ。
すでに暗くなっていましたので、
いくら流行っている床屋でも大丈夫だろうと。
交差点でひょいと見上げると、
床屋の窓ガラスに人影はありません。
信号が青に変り、
小走りで渡って階段をとんとんとんと駆け上がります。
ドアをそっと開け恐る恐る見ると、
だ~れもいません。
「こんにちはー」と大声を出したら、
奥から床屋のご主人が現れました。
「どうぞ」
「一番短いのでお願いします」
「はい」
無駄口は一切きかず、
ダンサブルに刈っていきます。
顔を剃ってもらい、
そろそろ終りかと思ったころに、
一人また一人と客が入ってきました。
お代を払いドアを開け、そっと閉めると、
中から「どうぞ」「いつものように」「はい」
ダンサブルな床屋は夜も踊っています。

写真は、なるちゃん提供。

 寒空や尻に鍼打ち仰け反れり

ベストセラー第1位!

 

 誕生日注意したのに風邪引けり

つ、ついに!
春風社の新刊『乱歩彷徨(らんぽほうこう)』が
東京堂書店の今週のベストセラー第1位になりました。
著者は作家・評論家の紀田順一郎さんです。
ネットで見ると第3位ですが、
昨日電話で確認したところ確かに第1位だとのこと。
広告代理店に勤めている旧知の先輩が教えてくれました。
「今、東京堂にいるんだけど、
ひょいと見たら、
春風社の本が第1位だっていうからビックリしてさー。
なんかあったのかと思ったよ。
え。はははは…。わりーわりー。
だって、スティーブ・ジョブズより上だよ。
驚くよ誰だって。おめでとう」
たまーに会社に電話をしてきても名乗らず、
電話を取り次いだ者が
「三浦さん、男の人からです」と言えば、
だいたいその人からです。
いつもぶっきらぼうな物言いながら、
春風社の立ち上げからずっと応援してくれています。
もう一つ。
昨日税理士の先生が会社にみえられました。
決算の数字が整ったとのことで、
第十二期は第十一期と比較し、
ほぼ10%の売り上げ増であるとの知らせ。
これも有難いことでした。
さらに昨日は、
NPO法人ツブヤ大学とヨコハマ経済新聞とのコラボ企画
Book学科ヨコハマ講座 よこはま本への旅
の二回目。
本のからだ本のかお」の題で、
わたしが進行役となり矢萩多聞さんにインタヴューしました。
あっという間の二時間でした。
トークの模様は、
いま流行りのUstream(ユーストリーム)でも見れます。
多聞君と知り合った頃を思い出しながら、
楽しく聴きました。
聴きに来られた方たちも、
面白かったとつぶやきながら帰っていかれました。
いい一日でした。
十三期もがんばるぞー!!

写真は、まるちゃん提供。

 喉からの風邪に私もベンザかな

ああビックリした!

 

 飛び乗りて車中マスクに近寄らず

昨日、
渋谷の「サラヴァ東京」を会場に、
ことばのポトラックvol.6「東北を想う、東北を歌う」が開かれました。
佐々木幹郎さんが司会進行役となり、
谷川俊太郎さん、高橋睦郎さん、高橋竹山(二代目)さん、
特別ゲストとして御厨貴さんが登壇されました。
東日本大震災に関連した詩を持ち寄り(ポトラック)、
朗読してくださいましたが、
三人三様の詩がまさにお料理で、
意味はもちろん、声質、発声に驚き、
共振しながら楽しんで聴かせていただきました。
とくに佐々木幹郎さんは、
新作詩集『明日』のなかから、
拙著『父のふるさと秋田往来』に序詩として書いてくださった
「そんだらごど言ったって」を朗読してくださり、
ビックリしました。
恥ずかしいやら、嬉しいやら、有難いやらで、
ドキドキしながら聴いていました。
来年三月に、
ことばのポトラック七回分をまとめ、
『ことばのポトラック』として
春風社から刊行されることにも触れてくださり、
杜撰でデタラメな仕事や対応ぶりに
憤懣やるかたなかった今日この頃、
こころくばりの見事さにも感動しました。
第二部は高橋竹山(二代目)さん。
東京生まれの高橋さんが、
初代の三味線に惹かれ、
やってこられた道の険しさを思いました。
初代の音は方言と同じで、
風雪に叩かれた云わばふるさとの音であり、
二代目はそれを深く理解することから
始めなければならなかったでしょう。
演目が終り、
最後にお話されたあいさつのなかで、
土地土地の人の前で演奏できる、
聴いてもらえることがありがたいとおっしゃいました。
その「ありがたい」は、
ふつうの意味の感謝の言葉を超え、
まさに「有難い」とおっしゃっているのだなと、
合点がいきました。
奇麗と汚い、オープンなこころと偏屈が同居するふるさとを
改めて考えさせられる会でもありました。

 デタラメに破れし我に枯葉かな

おばさんベトナム留学記

 

 マンションのドアの前まで落ち葉かな

自称“おばさん”が一念発起しベトナム語を習い、
ついにベトナムの地を踏み、
一年間そこで人と文化に触れた記録が本になりました。
おばさんベトナム留学記
というのがその本です。
なぜベトナムなのか?
これから読む人のためにここには書きませんが、
「あとがき」でそのことに触れています。
いただいた原稿を読んだとき、
わたしは目頭が熱くなりました。
本というのは、
これほどの思いを盛る器でもあるのだなと、
改めて思いました。
また、母というのは凄い! とも。
と書くと、
なんだか重い内容の本みたいですが、
とても軽味のある、
おもしろく微笑ましい留学記です。
ニワトリを家でさばく現地のおばさんに目を円くしたり、
教わっている先生のバイクの後部座席に乗せてもらい、
風を切って走ったり、
大学のパーティーに参加したり、
現地の小学校を見て回ったり。
著者の中嶋さんは、
日本で小学校の先生をしていた方です。
ベトナムに興味のある方も無い方も、
「あとがき」を読むと、
“おばさん”がなぜベトナムを目指したのか、
合点がいくはずです。
それから最初に戻ってもう一度読むと、
なるほどそういう心でベトナムの人と文化に接したのかと、
しみじみ考えさせられます。
税込1575円。
どうぞ手にとって読んでみてください。

 木の葉降りこの道どこへ続くやら

本のからだ本のかお

 

NPO法人ツブヤ大学が主催する
「Book学科ヨコハマ講座」の二回目が近づいてきました。
一回目は先月、わたしがゲストに招かれ、
本づくりについて話をさせていただきましたが、
二回目以降は、
わたしが司会進行役となり、
ゲストをお招きし横浜と本について、
いろいろなお話を伺います。
二回目となる今週は、
画家・ブックデザイナーの矢萩多聞さんをお招きし、
本の装丁についてお聞きします。
矢萩さんは横浜生まれ横浜育ち。
春風社との出会いからブックデザイナーになりましたが、
今や日本を代表する装丁家です。
矢萩さんがこれまで手がけた本を多数展示いたします。
お越しいただいた方に本を手にとっていただきながら、
本づくりにかける思いを矢萩さんからお聞きしたいと思います。
ふるってご参加ください。
お越しいただけない方は、
Ustream(ユーストリーム)でもご覧いただけます。

日時:11月24日(木)20:00~21:00(終りは少し延びる可能性あり)
場所:さくらWORKS会議室(横浜市中区相生町)ここをクリック
JR関内駅から徒歩5分。
申し込みはこちらから
タイトル:「よこはま本への旅」
テーマ:本のからだ本のかお
定員:20名
入場料:1000円